おかずやおつまみとして人気の海藻モズク。しかし実は普段我々が食べているモズクは「正真正銘のモズク」ではない可能性があります。
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佐渡で「花モズク」の旬が到来
新潟の沖合に浮かぶ佐渡島。ここで先月、特産品である「花モズク」の収穫が行われました。
花モズクは、同島で毎年5月の間のみ収穫される海藻。漁師たちが浅瀬に船を浮かべ、ブラシのような道具でからめとりながら収穫していきます。
鮮度落ちが非常に速いため、収穫された花モズクは塩漬けに加工されたのち、各地の市場へ向け出荷されていきました。
「花モズク」ってどんなモズク?
この花モズクとは通称で、標準和名はモズク科モズク属に属する「モズク」です。海底や岩に付着するための根(仮根)を持たず、ホンダワラなどほかの海藻に絡まるようにして生息するためにこのような名前が付けられました。
モズクは北部北海道を除く全国の海岸に生息しており、各地で採取され食材として流通しています。
そのほとんどが天然物であるため、海藻類の中では高級品と言えるモズクですが、特に春~初夏に採れたものをいくつかの地域では花モズクとよび、珍重するそうです。
いわゆるモズクはモズクではない?
この花モズク、種名こそ正真正銘のモズクなのですが、実は一般的に「もずく」として流通するものとは異なっています。
いまわが国で最も流通しているもずくは「オキナワモズク」という別種の海藻で、沖縄を中心に養殖がおこなわれているものです。またそのほか「イシモズク」という種ももずくとして流通しますが、ぬめりがないため食感が大きく異なります。
さらには「クロモ」と呼ばれる海藻も、富山などでモズクとして流通するのですが、こちらはモズクと比べ非常に太く歯ごたえが強いのが特徴。ぬめりもより強いです。
オキナワモズク、イシモズク、クロモはいずれもナガマツモ科というグループに含まれ、本家モズクとはかなり縁遠い海藻。しかしこれらは標準和名モズクよりも「もずく」として知名度が高い、という逆転現象が起きているのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>