「オジサン」が高級魚化の傾向のワケ フレンチの世界で需要高まっているから?

「オジサン」が高級魚化の傾向のワケ フレンチの世界で需要高まっているから?

「オジサン」という名前で呼ばれる魚のグループがいるのをご存知でしょうか。彼らは近年、食の方面でその評価を上げている存在です。

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オジサンと呼ばれる魚たち

魚には、ユニークな名前を持つものがいくつかあります。その代表とも言えるのが、今回ご紹介する「オジサン」です。

オジサンとは、ヒメジ科というグループに所属するいくつかの魚の総称です。標準和名オジサンという魚もおり、狭義ではその魚のみを指す名称ですが、釣りや鮮魚流通の世界では、このオジサンが含まれるヒメジ科ウミヒゴイ属の魚たちをとくに区別せずオジサンと呼んでいます。

「オジサン」が高級魚化の傾向のワケ フレンチの世界で需要高まっているから?標準和名オジサン(提供:PhotoAC)

ヒメジ科の魚の下顎には、餌を探すためのヒゲ状の組織が2本生えています。これが見事なあごひげに見えるので、小笠原などでオジイサンと呼ばれており、これがなまってオジサンとなったと言われています。

まるで錦鯉なオジサン

標準和名オジサンは伊豆諸島や先島諸島など南に行かないと見られない魚ですが、それ以外の”オジサン”は本州南部でも普通に見られます。

釣りや魚市場で特によく出会うのが「オキナヒメジ」と「ホウライヒメジ」の2種。いずれもオジサン類の中では大型で、体長は40cmを超えることもあります。

「オジサン」が高級魚化の傾向のワケ フレンチの世界で需要高まっているから?ホウライヒメジ(提供:PhotoAC)

彼らはいずれも赤をベースとした派手な色合いをしており、その大きさや大きいサイズの鱗も手伝って、まるで錦鯉のような見た目をしています。そもそも属の由来になったウミヒゴイも「海緋鯉」つまり海の赤い鯉という意味なのです。

面白いことに、彼らは体表の匂いもややコイに似ています。そのため魚に詳しくない人がこれらの魚を見たら「ヒゲの生えた変な錦鯉」と認識してしまってもおかしくありません。

気がつけば高級食材

そんなオジサンたちですが、かつては未利用魚とも言える存在でした。水揚げの多い南日本ではローカル食材となっていたものの、都市圏では派手な色合いもあって敬遠されてきたのです。

しかし最近、彼らは市場でも値をつけるようになり、産地でも活け締め処理などをして出荷する傾向にあります。これは「フレンチ」の世界での需要が出たことが大きいと見られます。オジサンの鮮やかな皮目の色合いと淡白な白身が、ムニエルやポワレなどフレンチの調理法にとても合うためです。

「オジサン」が高級魚化の傾向のワケ フレンチの世界で需要高まっているから?オジサンの刺身(提供:PhotoAC)

またそもそもオジサンは産地では美味な魚として知られてきた存在。特に旬の脂が乗ったものは刺身や寿司といった和食に用いても絶品です。

「海の錦鯉」なオジサン、今後は全国的にも一般的な食材になっていくかもしれません。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>