冬が旬の味覚といえば、カニ。美味しいのは脱皮の前のパンパンに身が詰まったものと言われていますが、この脱皮の時、タカアシガニは「生死の境」にいることご存じでしたか?
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
タカアシガニとは
タカアシガニは「十脚目・短尾下目・クモガニ科」に分類される蟹です。日本近海の深海に生息する巨大な蟹で、現生の節足動物では世界最大になるカニです。
その大きさはというと足を広げた場合、なんと最大3mにもなるのです。
寿命がとっても長い
一般的なカニの寿命は長くても3年ほどだと言われていますが、このタカアシガニ、なんと推定100年は生きると言われています。
理由は定かではありませんが、一説によると、深海で水温が低いことにより代謝が限りなく遅いのではないかと考えられています。
この点については今後の研究に注目です。
殻が骨の役割にも
なんとなく、甲殻類は強固な殻で外敵から身を守っているイメージですが、それ以外にも殻には役目があります。
カニを含む節足動物には骨がなく、かたい殻を駆使して体を支えているのです。
そのため、甲殻類は大型になればなるほど地上では軽快に活動できなくなり、伊勢エビなどの大型の甲殻類は歩いたりすることはできず、飛び跳ねることしかできません。
浮力のある海中でしか活動できないのはこのせいなのです。
タカアシガニの脱皮
カニを食べる際には殻の中に身が詰まっていることが消費者的には非常に大事なポイントではあります。しかし、タカアシガニにとってはこのパンパンに身が詰まっている状態こそ命の危機ともいえます。
水族館でタカアシガニを見たことがある人ならわかると思いますが、タカアシガニは非常に動きが遅いです。そのため、脚が長いことも相まって、脱皮にも時間が掛かり、水族館での記録では6時間を超える長丁場になることもしばしばあるそう。
また、この脱皮は命をかけた戦いでもあり、サメなどの外敵はこの脱皮の瞬間を狙って襲ってくることもあります。脱皮中や直後の殻は非常に柔らかいため身を守ることが出来ず、格好のターゲットになってしまうのです。
また、脱皮には非常に体力をつかうため、最中に死んでしまうこともあるようです。
身が詰まってるのは美味しい証拠
脱皮には非常に多くのエネルギーをつかうため、カニは脱皮までに多くのエネルギーを身に貯めています。
そのエネルギーこそ旨味なのです。
したがって脱皮直後はうま味も減り、身も細くなってしまいます。カスカスやパサパサの身というのはまさにこの時の身のことなのです。
ちょっと残酷なようですが、美味しいカニを食べるには脱皮直前のものを選ぶようにするといいでしょう。
<近藤 俊/サカナ研究所>