かつてイギリスのメディアで「世界一ブサイクな魚」として取り上げられ、有名になった魚がいます。手に入ったので食べてみました。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
世界一ブサイクな魚「ブロブフィッシュ」
突然ですが皆さんは「世界一ブサイク」と呼ばれる可哀想な魚についてご存知でしょうか。
もう10年以上前になるのですが、イギリスの大衆紙がそのような言葉で紹介した魚がいます。それはブロブフィッシュ。
ブロブとは「ブヨブヨして醜い」という意味の言葉なのですが、この魚はまさにその通りの見た目をしています。潰れた団子っ鼻にへしゃげた小さな目、全身ピンクという色合いはまさにモンスターさながらです。
日本では「ニュウドウカジカ」
そんなブロブフィッシュですが、実は日本でも水揚げがされています。というよりこの魚は日本近海に多く棲息している深海魚の一種です。
我が国ではこの魚は「ニュウドウカジカ」と呼ばれています。ウラナイカジカというグループに含まれているのですが、その中では最も大きいことから「入道」の名前がついたといいます。とはいえカジカの中ではさほど大きなものではなく、大きくても全長30cmほどです。
そんな彼らですが、実はもともとピンク色はしていません。ではなぜピンク色の写真が有名なのかというと、彼らが深海に暮らしていることが関係しています。
深海底に棲む魚は「深海底引網漁」で漁獲されるのですが、底引網は引き上げる際にどうしても中の魚が圧迫されてしまいます。もともと体の柔らかいニュウドウカジカは、圧迫されて擦れると内出血してしまいこのような色合いに変色してしまうのです。
いったいどんな味?
先日、ご縁がありましてこの魚を食べる機会に恵まれました。
捌いてみると全身がプルプルのゼラチン質に包まれ、骨もプラスチック状で柔らかく、アンコウやゴッコ(ホテイウオ)にそっくりでした。
しかしぶつ切りにして炊くと、あっという間に煮汁が白濁します。こう見えて身や肝に沢山の脂を含んでいるようで、その味には濃厚なコクがあり絶品でした。
醜い魚は美味いという言葉が我が国にはありますが、ニュウドウカジカはその究極形と言えるかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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