春は多くの海水魚にとって産卵の季節である。特に沿岸で釣れる魚は、春に産卵する種が多い。アジ、スズキ、クロダイ……など。魚には行動原理があり、釣り人の視線でいえばそれを読んで釣るわけである。春の産卵期の挙動を知っておけば、手堅い釣果に結びつく。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター井上海生)
春に産卵を迎える魚
まず、春に産卵を迎える魚を確認していこう。
アジ
代表的なもので言うと、アジだ。海全体の栄養と言えるベイトでもあり、釣魚としての人気もある、このアジが産卵を迎えるわけだから海は騒がしくなる。春、水温が15℃に近づくと、アジは沿岸に寄ってきて、藻や堤防際の海底に産卵する。
産卵前には「荒食い」と呼ばれる時期があり、よく食べる。ただ、お腹に卵を抱えているわけで、もともと体にモノがいっぱいの状態なので、食いが立つ時合いは短い。
シーバス(スズキ)
ソルトルアー・ターゲットの代表格シーバス。沿岸の食物連鎖の頂点に立つシーバスもまた春に産卵を迎える。産卵前のシーバスは釣りやすく、産卵後は途端に体力を失って活性が低くなり釣りにくくなる。
地域にもよるが、主には多毛類が浮き始める「バチ抜け」と産卵の時期が重なり、釣りやすいのはバチ抜けが始まる3月~5月くらいだ。
チヌ(クロダイ)
通称チヌ、クロダイの産卵も春だ。「ノッコミ」と言って、沖から接岸してきた回遊個体を団子エサで仕留める釣りも、春の風物詩。沿岸の居着きも同様に春に産卵するが、ベイトを特定しにくいのが難ではある。主にはマイクロベイトを食うようだが、地域により大きく異なり、マッチ・ザ・ベイトにはめにくい。
その他、アオリイカも春に産卵を迎える種だが、ここでは省略しよう。
産卵前はベイトを食べまくる
これらの魚の産卵前の行動パターンは、基本的に「荒食い」だ。よく食べる。しかし、産卵が終わると一転して食わなくなり、体力を失って深場に落ちる。よって、釣るならすべて産卵前に仕留めたい。
シグナルは「バチ」
アジ、シーバス、チヌ。とりわけシーバスが有名だが、産卵の時期のシーバスは、とにかくバチを好んで食う。バチ抜けしているエリアではわかりやすくバシャバシャと水面を割ってバチを口に入れているので、その眺めを見るだけで「釣れる」と思うだろう。
同様にアジ、チヌもバチを好んで食う。メバルもバチを好む。
よって、産卵前の荒食いが始まるシグナルは、「バチ」と読めばいいわけだ。実際にバチを食っているのかどうかわからないが(釣った魚のお腹を見ると小魚がいることも多い)、バチが湧き始めたら、産卵パターンに入ったと読んでいい。海底が砂地で、常夜灯などの光が当たる範囲や、河口ではバチ抜けが起こりやすいので、こまめにチェックしにいこう。
春はバチの産卵期でもある
ところで、春、なぜバチがあのようにも迂闊に水面にふわふわと浮いてくるのか、ご存じだろうか?
理由は、実はバチにとっても春は産卵期にあたるからだ。産卵のために少しでも力をチャージすべく、光の当たる範囲に、光合成して増殖したプランクトンを食べにくる。すなわち春とは、各種の魚も、その魚のベイトも含めて、産卵前の荒食いを行動原理に動くのである。
「産卵前荒食い」は大チャンス
すべての釣り物で期待大の「産卵前荒食い」。2月3月という寒い時期を家でじっと待機して、やっと釣り場に立つアングラーの我慢が報われるような期間である。
しかし、繰り返しになるが、産卵後になるとすべての魚が体力を失い、釣りにくくなる。うまく好機をとらえるために、この時期はこまめに魚釣りに出かけたい。
ボラの邪魔にご注意を
何やら良いことばかりみたいな春時期のオカッパリだが、邪魔者も入る。ボラだ。
ボラは、基本的にそんなにルアーに食ってくる魚ではない。しかしどういうわけか、春はジグサビキにも食うし、トップウォーターにも食う。どこにでもいる魚で、食い気になっているときには避けるのが難しい。筆者はボラの群れを見つけたら思いっきりヘッドライトを当ててやって一瞬でスレさせるようにしている。ボラ対策に参考にしてほしい。
<井上海生/TSURINEWSライター>