「粉もん」や焼きそばに欠かせない食材である青のり。食卓に大事な存在であるだけでなく、環境保全にも大きく貢献しうる存在なのだそうです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
アオノリって何者?
「海藻といえばなに?」と聞かれたときに、多くの人が答えるのはきっと「ワカメ」「ヒジキ」「ノリ」などでしょう。あえて「アオノリ」と答える人が居たら、きっと少し変わり者の方ではないでしょうか。
そもそもアオノリが海藻であるということも、知らない人が多いかもしれません。アオノリは「アオサ」とも呼ばれる海藻類の一種で、浅い海辺や河口などの汽水域に広く生息しています。
一般的にノリと言われるスサビノリが紅藻類なのに対し、アオサは緑藻類できれいな緑色をしていることからアオノリと呼ばれます。一般的にアオノリとして流通するのはアオサ類の中でもヒトエグサ、スジアオノリなどといった一部の種です。
「青のり」で二酸化炭素を減らす
さて今、そんなアオノリを使って「地球環境を守ろう」とする研究が進んでいるのをご存知でしょうか。
福島県の福島国際研究教育機構は先月、同県にある汽水湖・松川浦でアオノリの一種であるヒトエグサを大量生産し、大気中の二酸化炭素を吸収させる研究に着手したと発表しました。
ヒトエグサは他の多くの植物同様に二酸化炭素を吸収して光合成を行うため、これを大規模に養殖することで二酸化炭素吸収量を増やすという目論見です。松川浦は東日本大震災以前は国内屈指のアオノリ生産地であり、この試みは当地におけるアオノリ栽培の復興につなげるという意味合いもあるそうです。
海藻は世界を救う
同研究ではアオノリと同時にコンブも利用し、二酸化炭素吸収量を相当量増やすことを目指しています。しかしなぜ、これらの「海藻」を使用するのでしょうか。
海藻類は海中にあるため海水中に溶け込んだ二酸化炭素を吸収するのですが、近年大気中の二酸化炭素濃度が上がっていることから、海水中の二酸化炭素量が急激に増加しています。海藻類はそれを効率よく吸収してくれるのです。
海藻類が吸収する二酸化炭素は「ブルーカーボン」と呼ばれており、陸上の植物が吸収する二酸化炭素「グリーンカーボン」よりも2.5倍ほど多いと言われています。海藻を養殖・利用することは、温暖化の防止に大きく貢献することだと言えるのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>