猛毒を持つことで知られる「フグ」が、ちりめんじゃこに混入して売られる事件が毎年のように発生しています。もし食べてしまったらどうなるのでしょうか?
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
スーパーで「フグ混入事故」が発生
11月中ごろ、北海道のスーパーマーケットで販売された「しらす干し」製品の中に、フグの仲間が混入しているのが見つかり騒ぎとなりました。
見つかったフグはサバフグの一種の稚魚とみられ、大きさは3.5cmほど。購入者が保健所に連絡したことから発覚し、商品の回収と注意喚起が行われました。
10月には神奈川県のスーパーでも、ちりめんじゃこにフグの稚魚が混入しているのが見つかり、回収処分が行われていました。
危険性はどうなのか
サバフグの仲間には無毒のシロサバフグもいますが、有毒のクロサバフグやドクサバフグ、また毒性の不明な雑種タイプがおり、今回混入したものが毒成分を含んでいる可能性はあります。
ただし、フグ毒は強力な猛毒であるとはいえ、ある程度の量を摂取しないと健康被害が出ることはありません。しらす干しに混ざる程度のサイズの稚魚であれば、そもそもの重量が軽いために含有する毒成分自体が少なくなっています。
強い毒を持つことで知られるクサフグやトラフグであっても、上記の程度のサイズならその毒量は1ngほどに過ぎず、致死量の数百万分の1程度に過ぎません。死に至ることはおろか、健康被害が出る可能性も極めて低いでしょう。
選別にかかる手間と法律のジレンマ
とはいえ、フグはその種類にかかわらず、有毒部位とされる卵巣や肝臓は必ず除去してから販売しないといけない、と食品衛生法により規定されています。仮に無毒であっても、ふぐ調理師免許を持たない人に「丸ごとのフグ」を販売してはならず、今回のような例があると回収処分の憂き目にあいます。
ちりめんじゃこやしらす干しは魚介製品の中ではとびぬけて小さく、また生きているときからほかの生き物が混ざっているため、混獲を完全に防ぐことはできません。そのため水揚げ後に選別を行うことが必要ですが、その手間にかかる費用は製品の価格にのしかかってきます。
本来はフグの一つや二つ混ざっていたって誰も困らない、というとさすがに語弊がありますが、安くて美味しいちりめんじゃこを食べるためには、例えば「毒成分を無視できる程度のフグは混入していても問題ない」といったような臨機応変なルールがあってもいいように思います。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>