イタリアンの食材として有名なアンチョビ。実は魚そのものの名前でもあり、そして我々日本人の生活にとっても欠かせない存在となっています。
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イタリア料理に欠かせない「アンチョビ」
イタリアンに用いられる食材は数多ありますが、魚介系の食材として最も有名なものといえばやはり「アンチョビ」ではないかと思います。
ピザソースに混ぜられたりピザそのものの具になったり、あるいはパスタにも用いられるアンチョビ。そのまま食べると旨味と塩気の塊のような味なのですが、正体はなにかご存知でしょうか。
実はこれは「カタクチイワシ」という魚の一種です。3枚におろした身を塩漬けにし、発酵させたもので、タンパク質が分解してできたアミノ酸により濃厚な旨味があり、食材としても調味料としても用いられます。
実は「魚の名前」でもある
このアンチョビ、日本では食材としての知名度があまりにも高いですが、実は「魚の名前」でもあります。
というのは、アンチョビの原料として用いられる魚の名前そのものが「アンチョビ」という魚なのです。
むしろ世界的にはカタクチイワシのことをアンチョビと呼ぶことが多く、日本のカタクチイワシも海外の図鑑にはアンチョビの一種として記載されています。
当然「アンチョビの鮮魚」も存在するわけですが、日本でその言葉を聞いてもポカーンとしてしまう人のほうが多いかもしれません。
我々の生活を支えるアンチョビ
そんなアンチョビですが、実はイタリア人だけでなく、日本を含む世界中で欠かせない存在になっています。それはもちろんイタリアンの食材として食べられているという話ではなく、また人の食料でもありません。
というのはこのアンチョビ、実は世界中で「養殖魚の餌」として大変重要な存在なのです。魚粉に加工された上でペレット状にし、飼料として用いられます。
主にペルー沖がアンチョビの主要産地となっており、ペルーでのアンチョビの水揚げの多寡が即座に魚粉の価格に反映され、最終的には養殖魚の価格をも左右します。
現状は日本人含め、世界中の多くの人が「アンチョビ」によって命を支えられているのだと言えます。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>