釣ることと食べることは何もかもが違うが、とはいえ、釣り人ならば誰しも思ったことがあるはずだ。「釣るのと食べるの、正直、どっちがいいんだろう」。おおむね。買う方が安いというのは、承知している。それでも釣る方に価値がある、と感じるマインドは何か?
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター井上海生)
魚は釣るより買う方が安い
魚はスーパーで買ってしまえば安い。調理されたものでも、魚そのものでも。鮮魚コーナーで買った方が安くつく。もし大型のクエやアコウの50cm級などの時価となれば、話は違うだろうが。
たとえば、筆者が夢中になって10年近く釣っているアジだ。アジングにかけたお金は、100万近くいっているだろう。持って帰った魚は釣った数に比べてごく小数ということもあるが、金銭的な価値にすると、おそらく一尾800円くらいではないだろうか?
それが、スーパーでこんな安い価格が、しかも25cm級が買えてしまうとなるとやりきれない。メバルのようなカンタンな魚の良型などを除けば、ほとんど買う方が特に回るのだ。
釣る魚は高い
釣る魚の単尾のコストをここまで上げてしまうのは、総じて釣り具代、そして交通費だ。そこへタイム・イズ・マネーの概念を持ち出せば、我々はたいへんなお金の損失をしているのかもしれない。もっとも、釣りの時間まで時間給換算の労働をさせられたら、アングラーはみんな暴れ狂うだろうが。
それにしても魚網にかかった魚の安さ。スーパーの鮮魚コーナーからは、目を背けたくなるほどだ。アングラーあるあるだと思うが、魚が食べたいとき、「ああなんで俺はこんなものを買わなければならないんだ」と、刺身盛りを手にとっては悔しくならないだろうか?
もっとも、海辺の町で毎日釣りをしては自給自足のように食べている人にとっては、そもそも魚を店で買うという行為自体がアタマにないと思われる。そうなればカネの話などない。
魚釣りは面白い
お金と食目線で言えば、間違いなく魚は買った方がいいだろう。「釣った魚の方がおいしい」というのは、シビアな倹約家や2ちゃん創設者にとっては、「バカです(笑)」みたいな話かもしれない。まあその通りかもしれないが……。
ただ、パフォーマンスという面を考えれば、こればかりは間違いなく、魚釣りは「面白い」。食べても食べなくても魚釣りは楽しい。魚釣りという行為自体が、果てしないような歓びに満ちている。生きる歓びそのものに近い。釣るだけではない。道具を揃えることから、釣りに習熟すること、自分の釣りを作ること、その過程が楽しい。釣りは一生の趣味に値する。
釣りは大いなる「自由」
食では鮮魚コーナーに勝てないが、釣る楽しみは無上のものである。もちろんプロアングラーという職も、狭き門だがある。筆者のように、釣ることを綴る良さもある。
ただそういう風に具体的な価値をつけようとしなくても、「一時間だけ楽しみたければ酒を飲め」そして「一生楽しみたければ釣りを覚えなさい」という中国の格言もあるように、何もかも損得勘定みたいな万事せせこましいこの先進国で、釣りは大いなる「自由」である。
調理が嫌ならお店に持っていこう
それにしたって釣った魚はおいしく食べたい。だが調理の面倒くささ、そして筆者のように自ら己を蹴殺してやりたくなるような不器用な手の持ち主にとって、魚を捌くことは苦しみと涙の作業である。
しかし、救いの手はある。なじみの居酒屋にでも魚を持っていくといい。筆者は大阪心斎橋のとあるお店に、「ウロコ取りは面倒くさいけど調理してやるよ」と言う心優しき店主がいる。当然プロの手にかかった魚の味わいなのでうまい。そういう手段を持っておけば、実は冒頭につらつらと述べたような鮮魚コーナーの魚のバカバカしい安さなど、塵と吹き飛ぶ。
<井上海生/TSURINEWSライター>