魚の脂が健康に良いことはよく知られていますが、実は今それを「藻類」から取り出す研究が進められています。
（アイキャッチ画像提供：PhotoAC）
TSURINEWS編集部
健康に欠かせない「魚油」
健康食として注目されるようになって久しい「和食」。その理由の一つとして「魚がふんだんに使われている」ということが挙げられています。
魚は肉と比べてカロリーが低く、また肉類からは摂取することができないビタミン類を多く含んでいるため、健康に良い食材としてイメージされています。特に有名な魚の健康上のメリットは「油の質が良い」ということです。
DHAたっぷりのサバ水煮（提供：PhotoAC）魚に多く含まれるDHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸類は我々の健康に欠かせないものなのですが、体内で作り出すことができず、不足すると皮膚炎を起こしたり体調を崩してしまいます。そのため食物から摂取する必要があるのですが、これらを多く含む青魚やサケなどを普段からしっかりと食べていれば問題ありません。
オメガ3脂肪酸は「藻」に由来する
そんな魚油の中のオメガ3脂肪酸類ですが、実は魚自身が作り出しているわけではないということをご存じでしょうか。
脂肪たっぷりの大トロ（提供：PhotoAC）これらの脂肪酸は、主に水中に生息している微細な藻類によって作られています。それが食物連鎖の中で魚体の中に取り込まれ「魚油」の一部となるのです。
したがって、魚を漁獲しなくとも、オメガ3脂肪酸を作り出す藻類を培養すればそこからこれらの脂肪酸を得ることが可能です。
藻から採取の方が効率的
いま、そんな「藻類由来のオメガ3脂肪酸」が世界的に注目されています。いったいなぜなのでしょうか。
実は魚から魚油を取り出しそこからオメガ3脂肪酸を取り出すよりも、藻類から直接オメガ3脂肪酸を取り出すほうがエネルギー効率が良いのです。またこの方法では魚を漁獲する必要がないので、資源保護の点でも有効です。
培養された藻類（提供：PhotoAC）そしてこれも大きな理由となっているのが、藻類由来のオメガ3脂肪酸は「菜食主義者でも摂取することが可能」だからというもの。実際、世界最大の菜食主義者人口を抱えるインドでは、藻類由来のオメガ3脂肪酸が栄養不足に悩む人々を救うのではないかと大きく期待されています。
これらの理由から、現在世界各国で藻類由来のオメガ3脂肪酸培養が行われ始めているのです。
＜脇本 哲朗／サカナ研究所＞
