海の命を支える縁の下の力持ち『オキアミ』の生態 その数は5億トン?

海の命を支える縁の下の力持ち『オキアミ』の生態 その数は5億トン?

オキアミと聞いて釣りエサを思い浮かべる人も少なくないと思います。しかし、彼らが海に住むほとんどすべての命を支えているという事実はあまり知られていません。今回はオキアミという生き物について深掘りしていきます。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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オキアミはエビではない

オキアミは海で魚釣りをする人なら一度は必ず聞いたことがある、エサに使われる生き物です。

以前までは釣り人しか知らないような生き物でしたが、最近では食品のキムチに入っていたり、オキアミ由来のサプリが開発されたりと知っている人も少しずつ増えてきています。

オキアミは軟甲綱・真軟甲亜綱・ホンエビ上目・オキアミ目に属する甲殻類の総称です。見た目がエビに非常に似ているため、エビだと思っている人も多いかもしれませんが、実はエビではなくプランクトンの一種なのです。

海の中であらゆる生き物のエサとなり、すべての生き物の命を支えていると言われるオキアミはどのような生き物なのでしょうか。

海の命を支える縁の下の力持ち『オキアミ』の生態 その数は5億トン?エビのように見れるオキアミ(出典:PhotoAC)

プランクトンの定義

プランクトンと聞くと、水中を漂うごくごく小さな生き物のことだと思っている方も多いかもしれませんが、実はプランクトンの定義は大きさとは関係ありません。

プランクトンは水中や水面を漂って生活する生物のうち、水流に逆える遊泳能力を持たない生物の総称とされています。つまり、ここでは大きさは関係なく、水中を漂い流れの中で泳げるかどうかがキモになっているのです。

オキアミは最大で3〜6㎝程度にはなり、ミジンコなどに比べればとてつもなく大きな王ランクトンと言えます。しかし、泳げないのでオキアミもプランクトンなのです。

ちなみに、種類によっては人間よりも大きくなるクラゲも遊泳能力がほとんどないため、同様にプランクトンとして扱われます。

地球全体で約5億トン?

ではそんなオキアミは地球上にどれだけの数がいるのでしょうか。

オキアミは普段海の中では群れを作り、時には1立方メートルに10,000〜30,000匹になることもあるそうです。地球上のオキアミの数は途方もないほど多く数えられないとされています。そのためオキアミは匹数ではなく、重量で数えられ、世界中には約5億トンもいると考えられています。

オキアミ1匹の体重は約2gくらいなので……興味がある方は根気よく計算してみてください。

海の中ではあらゆるもののエサとなり、人間には釣りエサにも使われ、あんまり捕ったら5億トンなんてあっという間になくなってしまうのではないか。そう思う方もいるかもしれません。

オキアミは三陸海岸の太平洋海域、海外では中国や南極海あたりに生息し、年間30,000~50,000トンが水揚げされます。5億トンの中の50,000トンしか捕っていないのです。オキアミが人間の手によって乱獲されたとしても絶滅してしまうことはほぼないと言えるでしょう。

オキアミの高い生命力

オキアミは海では巨大な群れを作って泳ぎ、しかもその群れの長さは約6kmにも及ぶこともあります。

更にこの尋常ではない量のオキアミは一度の産卵で6,000〜10,000個の卵を産卵し繁殖します。

オキアミは冬になると、流氷の下で捕食者から身を守り、その間に繁殖をして夏の間に減った個体数を回復させます。

またオキアミは代謝を遅らせることによって、食物が全くなくても約200日間生存できる能力を持っています。この高い生命力、驚異的な繁殖力によってオキアミはエネルギー資源としてあらゆる生き物の命を支えているのです。

オキアミは天然の健康食品

オキアミが魚のエサになるのは数が多いだけが理由ではありません。

オキアミの非常に栄養価が高く、高タンパクなのでサカナも好んでオキアミを主食にしています。世界最大の哺乳類であるクジラもオキアミが主食であり、あの大きな体のエネルギーがオキアミだというのですから、その栄養価にも納得せざるを得ないでしょう。養殖業界でも古くからオキアミがエサに用いられています。

また、オキアミにはアスタキサンチンという自然の色素が豊富に含まれています。このアスタキサンチンは強い抗酸化力を持ち、ビタミンCの100倍、ビタミンEの1000倍ともいえる効力を有しているのです。

他にも抗炎症作用、がん発症抑制作用、糖尿病抑制作用、ストレス抑制作用をはじめ、目や脳、肝臓などのあらゆる体の組織の性能を高めるとも言われています。オキアミは食べるだけで健康になれる健康食品と言えるのかもしれません。

海の命を支える縁の下の力持ち『オキアミ』の生態 その数は5億トン?この大きな体を作っているのも「オキアミ」(出典:PhotoAC)

オキアミ由来のサプリメントも

オキアミにはアスタキサンチンの他にもオメガ3脂肪酸の代表格であるDHAやEPAが非常に豊富に含まれています。

そのため、最近ではオキアミを主成分にしたサプリなどのも開発され、予防医学が進んでいるアメリカではそういったサプリメントが爆発的に売れているそうです。

日本でもさらに注目が集まるようであれば、もしかしたらスーパーなどでオキアミのブロックが購入できるようになったりするかもしれませんね。

海の命を支える縁の下の力持ち『オキアミ』の生態 その数は5億トン?キムチにはオキアミのエキスが入っている(出典:PhotoAC)

<近藤 俊/サカナ研究所>