魚と比べて可食部が多く、食材としての歩留まりが良いイカ。身が美味しいのはもちろんですが「内臓」も捨てるにはもったいないです。
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イカは身より「ゴロ」が美味い
秋になると旬を迎えるものが多い魚介といえば「イカ」。特にスルメイカやヤリイカなどといった「ツツイカ類」は寒くなると接岸し、漁業や釣りの対象として盛んに漁獲されます。
そんなツツイカ類は、身だけでなくひれ(えんぺら)や足(ゲソ)、口(とんび)まで食用にでき、きわめて歩留まりが良い食材です。人によっては身よりもそういった部位のほうが好きという人もいるのではないかと思いますが、筆者も一番好きなのはずばり身ではなく「ゴロ」です。
ゴロ(イカゴロ)とはイカ(特にツツイカ類)の内臓のことで、大きな肝や墨袋、生殖巣などがひとつにまとまったもの。こってりした味わいと強い風味があり、つまみにするといくらでも酒が進む危険な食べ物です。
北海道など新鮮なイカが入荷されるところに行ったら、必ずイカゴロ料理を注文してしまうほど好きな食材だったりします。
釣り餌としても一級品
そんなイカゴロですが、特に北日本では釣り餌としても欠かせない存在。特に肝が大きく肥大するスルメイカの内臓は、サイズ別にパックに入って売られ、釣り餌コーナーでいつでも購入することができます。
大きいものは集魚剤に、小さいものは針にかけるための餌として使われ、柔らかいイカゴロを針にかけやすくした専用仕掛けも市販されています。
イカゴロは、東北で人気の魚であるアイナメをはじめカジカ、サケ、ソイ、アナゴなど様々な魚の特餌として釣り人に支持されています。魚にとっても常食したくなるほど美味しい食材なのでしょう。
食べるときの注意点は
そんな素晴らしいイカゴロですが、人の食材にするときにはいくつか注意が必要です。
まず、イカの内臓は消化酵素を多く含んでおり、極めて鮮度落ちが早いです。そのため見た目は新鮮そうでも刺激臭がすることがあり、そのようなものは食用に適しません。
またイカ類にはしばしばアニサキスが寄生しており、内臓には特に多いので、加熱せずルイベや醤油漬けなどで食べる際はいったん冷凍する(あるいは冷凍済みのものを購入する)のが無難でしょう。
そして最も気をつけたいのは「精莢(せいきょう)」。これはオスのイカだけが持つ、精子をメスの体内に送り込むための矢のような組織で、もしこれを生のまま口にすると口内に刺さって激痛に襲われます。
アニサキスや精莢は加熱することで不活化するので、少しでも不安があれは加熱調理して食べるのが無難でしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>