鰓呼吸のため空気中では生きていけないと思われがちな魚たち。ほとんどの魚は確かにそうですが、一部の魚は空気中でも呼吸をすることが可能になっています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
「空気呼吸」ができるハイギョ
アクアリウムでポピュラーな魚に「ハイギョ」というグループのものがいます。トカゲのように強固な鱗でおおわれた彼らはまさに「古代魚」といった風貌をしており、加えて胸鰭に筋肉と発達した骨を持つため「歩くように移動する」のが可愛らしく人気があります。
そんなハイギョにはもう一つ、他の多くの魚にはない大きな特徴があります。それは「空気呼吸ができる」ということ。
彼らは魚類ながらも、我々陸上生物と同様に「肺」を持っており、成長に伴い呼吸のメインを鰓から移行させます。これにより、空気中でも呼吸をすることができるのです。また数時間ごとに水上に顔を出して空気呼吸をしないといけない一方、生息している場所の水が干上がるような場合でも、その能力で生き延びることができるのです。
肺が変化して出来た浮袋
ハイギョは進化の過程で肺を発達させた結果、高度な空気呼吸を行えるようになった魚ですが、実は肺を持たなくても簡単な空気呼吸ができる魚もいます。そのような魚の多くは、浮袋にためた空気から酸素を取り込むことで呼吸を行います。
そもそも魚の浮袋は「肺が変化してできたもの」。生物たちは海で生まれ他の環境に進出していったのですが、なかでも海水と比べ水深が浅く、酸素が足りなくなりやすい淡水域へと進出した魚たちが、空気から酸素を得るために生み出した器官が肺だと考えられています。
その後、より水中に適応し空気呼吸が必要なくなったものたちの肺が、浮袋へと変化したとみられます。そのため原始的な魚類と言われるピラルクやガーといった魚たちは現在でも浮袋に肺の機能が残っており、空気呼吸ができるのです。
「空気呼吸をする」魚たち
さらには、肺や浮袋以外の器官を利用して空気呼吸を行う魚もいます。代表的なものがキノボリウオです。
彼らはその名前に反して木に登ることはないものの、水から出て陸上をはい回ることができます。それは鰓に「ラビリンス器官」を持っているからです。ラビリンス器官とはその名の通り迷宮状に入り組んだ構造の組織で、表面積を大きくすることで酸素と二酸化炭素の交換効率を上げ、わずかな水分さえあれば空気からでも酸素を得られるようにしているのです。
またトビハゼやウナギなどの魚は皮膚呼吸の能力が高く、皮膚から取り入れる酸素の割合が鰓呼吸を上回ることもあるほど。彼らもまた空気呼吸ができる魚だと言えるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>