3月11日、東日本大震災から9年の月日が経過しようとしています。三陸の海はいったいどのように変化したのでしょうか。実は、かつて海のゆりかごと言われた東北の海ではいま「磯焼け」と呼ばれる異変が起きています。三陸の海の今について調べてみました。
(アイキャッチ画像出展:PhotoAC)
三陸ではウニが大量発生
三陸の海に生えていた多くの海藻は一部を残して沖合に流されてしまいました。もちろん一部の岩場には津波にも耐え、流されずに育った海藻やその新芽たちが少しずつ繁殖しています。
しかしここで新たな脅威が現れます。それは「ウニ」です。
津波によって、流されてしまったのは、ウニも例外ではありません。しかしウニの幼生は海藻ではなくプランクトンを食べるため、アワビとは違って、大型の海藻がなくても成長することができます。津波から生き残った一部のウニが今まで通り繁殖し、少しずつ数を増やしているのです。
幼生時はプランクトン食ですが、ウニは成体になると海藻食に変わります。そのため、大型の海藻が生えている近海の岩場までやってきます。震災前の状態であれば、海藻のストックが豊富に蓄えられていたため問題になりませんでしたが、海藻が激減している今の状況では深刻です。津波にも耐え、岩場に育ちはじめた海藻やその新芽たちが、ウニによって食べ尽くされてしまっているのです。
大きな問題点は2つ
ウニの大量発生によって、大きく2つの問題が挙げられます。
ウニの貪食さ
実は繁殖能力よりも厄介なのはウニの食欲です。
ウニの食欲には、科学者たちも脅かされるほどだと言います。具体的には磯焼けの前後で海の色が変わるほど、影響力があります。
どういうことかというと、磯焼けの前は、海藻が茂っていた海は真上から見ると黒や茶色く見えますが、磯焼けの後では海藻が無いため青や緑色に見えるというのです。
ウニが大量発生することでその場の生態系が大きく変化してしまいます。
商品価値も低い
「でもウニなら高く売れるのし、たくさん獲ってしまえばいいのではないか」と考える方も少なくはないでしょう。
しかし、現在の三陸沖は、エサとなる海藻類が不足しています。そのため十分にエサを食べられていないウニの可食部は、スカスカで商品価値が高くないのです。商品価値が無ければ、漁業者も積極的に獲ることはありません。
『自然界ではどんどん繁殖する一方、増えているウニを獲る漁業者が減ってしまっている』
三陸の海はいまこの負の連鎖による問題に対面しています。
対策は人為的な駆除と繁殖
一度磯焼けが起きてしまうと、自然の回復力を待っても復活するのはなかなか難しいと言われています。環境自体を人間の手で戻してあげる必要があるのです。
具体的な磯焼けに対抗する策としてはやはり駆除でしょう。そして海藻の種などを人為的に蒔き、繁殖を促していく必要があります。自然界の状態を元に戻すには一時的な方法ではなく、地道で継続的な取り組みが必要なのです。
最近では、繁殖してしまったウニの商品価値を上げて販売をするといった取り組みも行われています。商品価値のないウニを獲ってきて、一時的に養殖プールで飼育し、商品価値を上げてから販売するというものです。そのエサには廃棄野菜が使われているためエサ代があまりかからないうえ、野菜の廃棄にかかるコストも削減でき、一石二鳥になっているのだとか。しかもエサに使われる野菜も廃棄野菜と言っても、地域のブランド野菜だったりと品質も非常い良いため、天然のウニよりも味が良い傾向にあるようです。