3月11日、東日本大震災から9年の月日が経過しようとしています。三陸の海はいったいどのように変化したのでしょうか。実は、かつて海のゆりかごと言われた東北の海ではいま「磯焼け」と呼ばれる異変が起きています。三陸の海の今について調べてみました。
(アイキャッチ画像出展:PhotoAC)
三陸沖は世界三大漁場
震災のあった東北の海、特に三陸沖は、世界三大漁場のひとつと言われ、世界的に見てもこれほど多くの海の幸を獲ることができる地域はそう多くはありません。
なぜ三陸の海がこんなにも豊かなのかというと、三陸沖は親潮、津軽海流、黒潮の3つの海流がぶつかる稀有な場所だからです。
これらの海流のうち、特に親潮には様々な栄養塩類が含まれており、「魚類を育てる親となる潮」という意味から親潮と呼ばれています。
北から流れ込んでくる親潮は三陸沖で南からやってくる温かい黒潮とぶつかり、ここでせき止められます。
すると三陸沖にはたくさんの栄養塩類が集まるため、この豊富な栄養と太陽の光をもとに海の幸がすくすく育ち、豊かな海を築いています。
東日本大震災による影響
しかし、豊かだった東北の海は、2011年3月11日におきた東日本大震災の影響よって姿を変えてしまいました。中でも被害が多かったと言われているのが、ワカメや昆布などの海藻、そしてアワビです。
アワビは草食動物で、海底に生えているワカメなどの海藻を食べて成長します。三陸海岸はアワビのエサとなるワカメが特に豊富で、全国収穫量の約7割を占めていました。このワカメが津波の影響でなくなってしまった為、天然のアワビも少しずつ姿を消してしまっているのです。
こういった海藻が著しく減少、または消失し、海藻が繁茂しなくなる現象のことを「磯焼け」と言います。三陸の海はいまこの「磯焼け」の脅威に脅かされています。
磯焼けによる影響
藻場は多くの生物の棲みかになり、大きく育つためには非常に大切であるため海のゆりかごとも言われています。
海藻をエサとするアワビやサザエなどが生育できなくなるのはもちろん、藻場を棲みかとする多くのカサゴやメバルなどのサカナも姿を消してしまいます。
海外では磯焼けのことを海の砂漠化「sea desert」と表現することもあります。この磯焼けが起こってしまうと沿岸地域の生態系が大きく変化してしまうだけではありません。
これらを漁獲することで生計を立てている漁業者の生計、生活を揺るがすことになってしまいます。