近年、高騰が続く「養殖魚の餌」。嫌われ者のあの生き物が救世主となるかもしれません。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
過去にない規模の”神の子”来襲
いまや毎年何らかの異常気象が発生している状況ですが、今年もまた厄介な気候現象が発生しています。それは「スーパーエルニーニョ」。
スペイン語で「神の子イエスキリスト」を意味するエルニーニョは、南米ペルーの沿岸の海でクリスマス(=イエスキリストの生誕祭)の頃に起こる現象で、海水温が例年と比べ高くなること、またその状態を指します。
通常のエルニーニョは平年水温と比べ0.5℃ほど高くなる程度ですが、今年のエルニーニョはなんと3.0℃ほども高くなる可能性があるため、スーパーエルニーニョと名付けられています。
魚粉不足は確定的
エルニーニョは汎世界的な海洋環境の異常をもたらすため、世界中の漁業に様々な影響をもたらします。その中で我々の暮らしに直接的に関係するものはおそらく「アンチョビ不漁」でしょう。
アンチョビはペルー沖で大量に漁獲されるカタクチイワシの一種で、そのままでも食用にされますが、多くは「魚粉」に加工されます。この魚粉は養殖魚の飼料の原料として極めて重要で、魚粉価格が高騰すると養殖魚の飼料の価格も高騰してしまいます。
魚粉ペレット(提供:PhotoAC)しかしエルニーニョが起こると当該水域の表層温度が高くなり、それを嫌うアンチョビたちは深いところに逃げてしまいます。そのため漁獲しにくくなり、結果として不漁となり、養殖魚の価格が高騰し、我々の食卓に打撃となってしまうのです。
カタクチイワシの代わりに「ミールワーム」
国内で生産し国内で消費される養殖魚の価格が、海外で生産される資材に依拠してしまうというのはあまり健全とはいえません。そのため我が国では、様々な形で「海外産魚粉からの脱却」が進められています。
その一つの手段として近年注目されているのが「昆虫」です。昆虫はタンパク質生産効率が高く、廃棄物などを飼料にして育てることができ、魚にとって必要な栄養も含んでいるなど、魚の飼料として非常に有望な素材といえます。
ミールワーム(提供:PhotoAC)先日も印刷大手のDNPが、小鳥の餌として知られるゴミムシダマシの幼虫、いわゆるミールワームをもちいた養殖飼料の開発を目指し、愛媛大学と共同で検証試験をスタートしています。嫌われがちな昆虫ですが、もしかすると我々の食卓にとって「救世主」となるかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>


