ダツ科の魚は体が細長く、長く伸びた上顎・下顎にはびっしりと鋭い歯が生えています。そのため網にかかったり、ルアー釣りなどで釣れた時にかまれたりすることがあります。さらに恐ろしいことに、夜間海面を照らすと突進してくることがあり、それによりけがをするおそれがあります。一方で食用とされたり、餌になるという一面も。今回はダツ科の魚についてご紹介します。
(アイキャッチ画像提供:椎名まさと)
尖った顎と鋭い歯に注意
ダツ科の魚は鋭い歯をもっていることからもわかるように、肉食性が強く、小魚を活発に追いかける獰猛なハンターです。
そしてこの鋭い歯のおかげで、刺し網などにかかったダツ科の魚を網から外すとき、またルアー釣りでダツ科の魚が釣れた際、魚体からルアーを外そうとした際に咬まれてけがをすることがあります。
光に突進する習性
さらに危険なことに、ダツ科の魚は夜間、電灯の光に突進することがあり、それにより怪我をしたり、当たり所が悪ければ命を落とすこともあります。これはダツが水面で光るものを餌の小魚だと勘違いし突進するからとされています。
沖縄県においては電灯潜り漁が盛んに行われており、海面や水中を照らしたことにより事故が発生することが多いとされています。そのため、盛んに注意喚起が行われています。
対策としては夜間に、むやみやたらに懐中電灯などで海面を照らさないことです。
ダツ科の魚を食す
ダツ科の魚の中でも重要な食用魚といえばサンマ!
しかしながらサンマは近年ダツ科の中に内包されていることが多いものの、異端な種であることから、ここではサンマをのぞくダツについてご紹介します。
ダツ科の魚は骨が青みを帯びた色彩になっていることや、細長い体つきで食用にされることは多くはないのですが、実際には美味しい魚です。残念ながら本州~九州の鮮魚店では販売されていることが少ないのですが、静岡県の鮮魚店では、ダツをまるごと1尾購入できました。
とくに美味しかったのは塩焼きで、やはりサンマと似た仲間なんだなあ、と思わせます。また煮物にして食べても美味でした。
沖縄においてもダツ科の魚は、追い込み網などで漁獲されて食用になり、冬季の11~1月にかけて盛漁期とのことで、この時期に煮つけにして食べると美味とされます。ただし夏季に水揚げされた痩せているものには腹部に白くて細長い寄生虫が潜んでいることがあるといいます。
食用以外の利用法として、釣りの餌に使われることがあります。ダツ科の魚は細長い体をしており、大物が食いつきやすいのでしょう。銀色の体をしていて、かつよく泳ぐため、大型魚へのアピールにもなるのかもしれません。
ダツ科の魚は危険というイメージが強いのですが、実際には不用意な行為が事故の原因となっているのです。青い骨を見ると食欲もわかないかもしれませんが、塩焼きなどは意外と美味で、釣れたら食べてみてもよいでしょう。
参考文献
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<椎名まさと/サカナトライター>