子ども向けの図鑑は、大人にもわかりやすく書かれている。ヘタな言葉のごまかしがきかない分、子ども向けに書かれたストレートな言い回しのほうがわかりやすかったりする。先日、私有の図鑑から面白い情報を得た。20年前。2004年出版の本には、「魚の身が赤いか白いかは、回遊が影響する」とある。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター井上海生)
身の赤白は「回遊が関係する」
魚の身が赤いか白いかは、回遊の有無が関係するとは、もはや「俗説」のようにもよく聞く。実際これは科学的な事実であるらしい。回遊性の高い魚は身に血の色が回って赤身になる(マグロやブリ)。あまり回遊しない魚は身の色が白い(シーバスやメバルなど)。肌の日焼け具合というか、運動する人としない人などと考えればわかりやすいかもしれない。
筆者が所有する、小学生向けに書かれた魚の本にも、この事実について記された部分がある。やはり身の赤い白いは、魚の回遊の習性にある。2004年出版の本で、今から20年前だ。この頃から同様に考えられているらしい。今後この説が覆ることもあるかもしれないが、少なくとも近20年間はこのように考えられてきたようだ。
それにしても子ども向けの本に、このような高度な、魚の身の色についての説明があるとは、なんとも恐れ入る。子どもの「なぜ?」に対する説明なのだろうが、だとすれば、そんなことまで目をつける子どもの「なぜ?」は芸術的だ。
酸素を取り込むと身が赤に
具体的に本の中の説明を見ていきたい。
要約すると、
「人はたくさん運動すると、はあはあ息を切らして、たくさん酸素を取り込もうとする。それはマグロも一緒で、口からたくさん酸素を取り込む。酸素を取り込むと、身の色が赤くなる。反対に、回遊しないカレイのような魚は、海底でジッとしているから、身の色が白い」
ということだ。かなり重要なところが省略されていて、「酸素を取り込むと身の色が赤くなる」という部分に、話の核がある。ここは次項に述べる。
しかし筆者もこのように書いていて気付いたのだが、魚の身の色は基本的に「白」と考えられているのだろうか?赤身の魚は、回遊しないわけにはいかないので必然的に赤身になるのだが……このあたりには、もう少し水産学の観点から、具体的な説明がほしい。まあ、古代は陸に上がって鳥になったヤツもいるというのだから、根本的に魚をひとくくりに考えることなどできないだろうが。
「タンパク質の色素」が影響する
なぜ回遊魚の身の色は、赤いのか?子ども向けの図鑑には「酸素をたくさん取り込むと身が赤くなる」とあるが、詳しいことを言えば、上述のようにもちろん理屈の通る説明がある。
血には「ヘモグロビン」という色素タンパク質が含まれる。この色が赤いのだ。たくさん酸素を取り込む、すなわち代謝がよく、生命活動上、必然的に多量の酸素を必要とするマグロなどの赤身魚は、ヘモグロビンを血の中にたくわえている。ちなみにこれを体内に貯蔵しておくと物質名は「ミオグロビン」となる。この貯蔵量が100g中10mgを超すと、赤身魚という類別になる。
鮭など別枠も
実はサバも赤身魚に分類されることをご存じだろうか?(といって、私も知らなかったのだけれど)
ヘモグロビン、ミオグロビン以外の要素で身が赤っぽくなる魚もいる。たとえば、鮭だ。市場に出回っている鮭はほとんど養殖だが、天然の鮭も含め、この魚の色が赤っぽいのは、食料として与えられるものがエビやカニなどと赤いからで、要するに「着色移り」みたいなものだ。
ちなみに専門学上は、マグロやカツオの動き方は「有酸素運動型」らしい。対して居着きの身の白い魚は、「無酸素運動型」。食べるときだけパッと動くので、それは有酸素運動にならない。私など運動習慣のない人間は、まさしく無酸素運動型ということで、だからこれくらい腹に脂がのっているわけだ……。
<井上海生/TSURINEWSライター>
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