同じ魚でも、体色が異なるものがいる。おそらくは水色(すいしょく)が影響しているのだろうが、それだけでもあるまい。今回は特に体色の違いが顕著なカサゴを見ながら、その理由を考えてみたい。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター井上海生)
カサゴの体色について
我々海の釣り人にとってもっとも近しい存在・カサゴ。どんな海でも釣れる。最近では那覇でも函館でも釣れるというのだから、もはや全国のアングラーの隣人といってもいいだろう。
筆者も釣りを覚えたての子どもの頃から、ともかく海の魚といえばカサゴを最初に思い浮かべるほどよく釣れるヤツだが、こいつらには、ある大きな特徴がある。水色に伴って、かなりハッキリと体色が異なるというものだ。一体なぜなのだろう?いや、水色と関連することから、答えは半分出ているようなものだが……。
体色は「水色で変わる」?
カサゴの体色は、その海の水の色で変わる。これは確かに、おおむねそうである。何かしらエビデンスもあるだろうが、何より釣り人の実感としてもハッキリとわかる。水色がいい色で釣ったカサゴは鮮やかな赤できれいだ。反対に水色が悪い湾奥で釣れる個体は、黄色っぽいというか、茶ばんでいる。どちらが「本来のカサゴの自然な色なのか」は、何とも言い難いが。
水の色で体色が変わる、とは、しかし具体的にどういうことだろう。水の色で、いわば「着色汚れ」するのだろうか?それもあるが、おそらく、魚が擬態するために、体色が変わるのだろうと思われる。
擬態のための体色変化
水色が悪い海では、カサゴ本来の色である鮮烈な赤だと、目立ってしまう。カサゴはもともと、あまり他のフィッシュイーターのベイトになりにくいと思われるが、しかし根魚の性格というか、「海底に隠れる習性」からして、決して赤で目立ってしまって得をすることはないだろう。水の色になじんで茶ばんでしまう方が、仮に赤色で実害がないにしても、まあ心落ち着くものであろうと想像がつく――。
もちろん水色で着色汚れする影響もあるだろう。というか、それも半分以上事実だと思われる。
しかし、「収斂進化」という考え方もある。特定の条件下に置かれた小さな群れは、大きな群れとは違った進化を遂げるのだ。そして、その小さな群れの特徴は、別の地域ごとに分かれていても、似る。つまりこれが収斂進化だが、カサゴの体色の黄ばみも、全国的に収斂進化の結果といえるのではないだろうか?何せどこにいっても「水質の悪いところのカサゴは汚い」と言われるのだから、間違いなさそうだ。
またカサゴは、あまり回遊することがない。特定のエリア内で繁殖する。親の体色が、そのまま遺伝的に引き継がれる。つまり水質の悪いところでは最初から黄色っぽい体色で生まれる。ありそうな話だ。
食味の違いは?
さて、そんな赤カサゴ、茶カサゴ、黄カサゴ。非常においしい魚だが、体色によって、あるいは釣れるエリアによって味の違いはあるだろうか?もちろんあるといえばある。しかし、筆者は最近、水色の悪いところでも、そんなに味に違いはないのではないかという気がする。ニオイ取りに注意すれば、そこまで味は変わらない……それが個人的な意見だ。もともと根魚は独特のニオイがするものだし。
さて、そんなカサゴくんたち。ご存じのように夏は新子が入れ食いの季節。20cm以下はリリースしてやってほしいが、大きいものは持ち帰って、食味も楽しみたい。筆者は最高30cmというオカッパリでは最大級レコードも達成している。身近な魚であるだけ、食べ比べとともに、サイズアップも狙いたい。
<井上海生/TSURINEWSライター>