私たちの身近にある海洋汚染問題 代表的な汚染原因を理解して海洋ゴミ削減へ

私たちの身近にある海洋汚染問題 代表的な汚染原因を理解して海洋ゴミ削減へ

釣りという行為はどうしても海の環境に対して負荷をかけてしまっています。

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サカナ研究所 その他

釣りがもたらす悪影響

近年、様々なメディアで海洋ゴミや海洋汚染についての記事を目にしますが、皆さんはどれくらい海洋ゴミや海洋汚染についてご存じでしょうか?

言葉は知っていても、具体的にどのような事例が海洋ゴミや海洋汚染なのかは知っているようで知らない人も多いと思います。

海洋ゴミや海洋汚染についてのおさらいしていきましょう。

海洋ゴミとは

海洋ゴミと聞くと、海に関係するゴミと言うのは分かると思います。

具体的に説明すると、砂浜や堤防など海岸に打ち上げられたゴミを「漂着ゴミ」、海面や海中を流れにのって漂っているものを「漂流ゴミ」、海底に沈下して堆積したものを「海底ゴミ」とし、これらをまとめて「海洋ゴミ」と呼んでいます。

海洋ゴミのほとんどは、人間の不注意や不法な廃棄(投棄)、自然災害などによって流されたものであり、風や海流の影響を受けながら海面や海中を漂い、重いものは海底へと沈み、一部が海岸へと流れ着いているものと考えられています。

海洋ゴミの種類の内訳は多種多様ですが、とりわけ、ペットボトルや食品容器などのプラスチック製品が多く、海洋ゴミの65.8%を占めています。これらのプラスチックは半永久的に自然界での分解が困難と考えられています。半永久的に分解できないという事はつまり、半永久的に環境中に残ってしまうこと。そのため、海洋環境や生物・生態系への影響が大きく、深刻なものと懸念されているのです。

私たちの身近にある海洋汚染問題 代表的な汚染原因を理解して海洋ゴミ削減へ海洋ゴミ(提供:PhotoAC)

海洋汚染とは

海洋汚染というのは、海洋ゴミを主とした海の汚染のことを指します。

海洋ゴミは海洋汚染の一因であり、その他にも船舶の事故による油の流出や、工業排水や生活排水なども挙げられます。

具体的には【国連海洋法条約】で分類され「船舶からの汚染」「陸上からの汚染」「海底での活動による汚染」「公海での深海底での活動からの汚染」「投棄による汚染」「大気からの汚染」の大きく6つに分けられます。

海洋汚染の発生要因としては、人が有害物質を海洋に持ち込む直接的なケースと、人が排出したものが河川や下水を通って海洋に流出する間接的なケースがあります。

私たちの生活に身近な例をいくつか紹介します。

生活排水による汚染

台所やトイレ、お風呂の排水、洗剤の混ざった洗濯水など、家庭からの生活排水にはさまざまな物質が含まれています。

生活排水が河川などを通じて海に流れ出ると、排水に含まれる有機物によってプランクトンが異常繁殖する海の富栄養化(赤潮)や、富栄養化による貧酸素海域の発生など、さまざまな問題が起こります。

さらに、近年では衣類の素材となっているマイクロプラスチック(5mm以下になったプラスチック)が洗濯排水と一緒に海に流れ出るといったプラスチックの海洋流出が大きな問題となっています。

農業排水による汚染

農薬や化学肥料が含まれる農業排水も海洋汚染につながる原因とされています。

化学肥料を含んだ農業排水が生活排水同様に赤潮を引き起こしたり、農薬の混ざった排水が河川や海の生態系に負荷を与えたり、大規模農業が行われるようになった現代では、自然界の自浄作用を超えた汚染の広がりが危惧されています。

産業排水による汚染

工場や事業所、鉱山などからの排水に含まれる化学物質や有害物質が河川を通じて海に流れ込むことでも海洋汚染が起こります。

カドミウムや水銀、鉛などの重金属、ベンゼンなどの化学物質が汚染の原因物質としてあげられます。これらは生物や生態系、人体に悪影響を与えます。

海洋ごみ

これは前述のとおりで、日々出るゴミなどが海に負荷をかけてしまっています。

今何ができるか

ここまで、海洋ゴミや海洋汚染の代表例について記載してきましたが、このほかにも、タンカーの座礁による油の流出や、大気を通じた汚染物質の降下、海底鉱物資源の開発、バラスト水の問題、廃棄物の投棄(使用済み核燃料を含む)、原発の処理水の海洋放出なども海洋汚染を引き起こす原因とされています。

これらは普段の生活からはなかなか見えない部分ですので、意識するのはなかな難しいかもしれません。

しかし、海洋ゴミについてはその多くが、私たち人間の不注意や故意によるものです。2050年には海洋プラスチックごみの重量が魚の重量を上回ってしまうと言われています。すでに取り返しのつかないところまで来てしまっているのは間違いありません。

次の世代の為にも、今からできることを少しずつ積み重ねて美しく豊かな海を守る必要がありますね。

<近藤 俊/サカナ研究所>