誰もが一つは、釣りに関してすべらない話を持っている……。オカッパリのライトゲーム界からは、この道も長い私が話し手としてエントリーしたい。独り笑ったり、隣でおかしなことをやられて笑いをこらえたり、釣りには滑稽な事件がつきものだ。3つマヌケなお話を披露しよう。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター井上海生 )
釣りには笑いがつきもの
少年時代、兄が家で釣り番組を見ていて、言った。
「こいつら、いつも笑っとんな……」
確かに。その番組でもどの番組でも、とにかくテレビに出ている釣り人は「ヘヘヘ」とやたら笑っている。魚が釣れたときにもそうだし、バラしたときまで笑っているのだから、仕方のない奴らだ。入れ食い時など、まさに笑いが止まらない状態となる。
私は長じた今でも時々、この兄の言葉を思い出す。時は四半世紀流れたが、相変わらず釣り人はテレビでもYoutubeでも常笑している。そういうのもバカみたいだが……たまにカッコつけてなのか、余裕をカマして笑っていないヤツを見ると、逆に腹が立つ。
ちなみに私も釣り中はよく笑う。「おまえって笑うこととか、楽しいと思うこと、生きててあるの?」と以前ヒトに訊かれたこともあるほど普段あまり笑わないので、一緒に釣りにいくと「え?」と驚かれたりもする。
釣り中にはいろんな笑いがあるが、大体が釣れて心地いい笑いや、釣れなくてウーンとうなっているときの苦笑いだ。しかし、そういうのとはまるで違う、古典的な「緊張と緩和の笑いの事故」に巻き込まれることもある――。
筆者の笑った思い出
私が経験した、そんな釣り中のアクシデンタリーな笑いを3つ語りたい。
「スイカを釣ったカップル」
明石の漁港で、デイカサゴをしていたとき。隣でサビキをしていたカップルの女の子が、なんということだろうか、スイカを釣り上げたのである。「わー、スイカが釣れたわ」と女の子は言った。「わー、ほんまやね」と男の子。
一体、これはどういうことだろう?そして君たちは……なぜそんなに普通にしていられるのだろう?スイカは、漫画で見るような、四分の一に切ったあのきれいな形をとどめていた。そんなのもツボに突き刺さってしまい、「バカなことを……」と俯いてその場を去るばかりだった。
「横におしっこしにきたおじさんが……」
海への放尿はやめてください。でもまあ、いるよね、そういう人たち。
釣りをしていると、自分は竿を持っていないのに、私たち釣り人の横にきて一緒に釣りを見守るおじさんやおばさんがいる。害のない世間話をしたり……良いものだ。しかし昨年の夏は、ちょっと例外的なおじさんが私の横に現れた。なんとそのおじさん、私からちょっと離れたところで、やおらズボンを下ろし、母なる海におしっこを放ち始めたのである。
「ああ、もう……これ結構、堤防につくと後々まで臭うんだよ」と内心畜生めと思っていると、おじさんが去って行ったので、私は犬の飼い主のような気分で海水をバケツですくった。それで堤防に付着した尿の跡を流そうとしたのだが、なんと、そこは「まっさら」だったのである。こんなのもめずらしい(!?)。
おじさん、なんという尿のコントロール力だろう……。
「コンドームが釣れた」
またどうにも下にかかった話になるが、コンドームが釣れたこともある。
ちなみに、台風の後の海だった。さすがに捨てた。来し方行く末、知るべくもない。
独り笑いや独り言が多い趣味でもある
釣りは、結構笑う。私は一人で釣ることが多いので、独り言も多い。もともと無口なので良い気分転換だ。ちなみに、笑いと鉄分と日光で、何か、頭の中で幸せの成分が作られると聞いたこともある。おお、フィッシング……なんと心の健康に良い趣味だろうか。
なんだか毎日が冴えない、いいことなんて何一つもない。そんなときには、どうぞ海や川や池のそばに立ってみてほしい。私は、自然の前では、前提として、人間は気楽になれると信じている。笑えることじゃなくても、何か良いものを持って帰れるはずだ。
<井上海生 /TSURINEWSライター>