鉄道、飛行機、大型豪華客船。乗り物が舞台となるミステリー小説は、その非日常がより顕著に現れ、面白みがぐっと増しますよね。そんなミステリー小説の舞台が釣り船だったら。小説とは、要はウソ、でっち上げの世界。釣り人目線でミステリー小説に欠かせない「完全犯罪」を考察してみました。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・尾崎大祐)
釣り船がミステリー小説の舞台になったら……
釣り船に乗ると、ここで殺人事件を計画するとしたらどうやったらうまくいくだろう?とか、どういう釣り物の船なら、うまくいくだろう?って、ふと考えてしまう時があります。
将来小説家になりたいと真剣に考えているわけではないのですが、時々釣り座でネタを考えたり、伏線を思いついて、それをスマホのノートアプリにメモし、気づけば帰宅後、プロット(内容の整理)作成してしまっていたり。(……今改めて、自分で自分のことを変な奴だと再認識しています)
そしてそんなことを考えだした時、最終的に考えること。それは完全犯罪。トリックは、ベテラン刑事も、名探偵も、そして天才物理学者の目をも欺かなくてはいけません。順位をつけてかるく紹介していきます。決め手は「闇」と「船長」。
3位大原の釣り船
大原の釣り船は朝が早いです。タイ狙いだろうがフグ狙いだろうが、まず間違いなく日が昇る前に出港します。そう、大原の船は確実に「暗いうち」に出港するのです。
更に、平日なら客は少なく、冬ならほぼ全員キャビンの中に入ります。大抵の釣り船は、キャビンからトイレに行くには、一旦外に出なければなりません。犯行計画はそこで実行に移します。
しかし、欠点も多々あります。ポイントまで比較的近い場合が多いので、実際に殺人が可能なタイミングは短いこと。そして、もし失敗し、帰りにやろうとしても、それはほぼ不可能。ピンポイントで実行に移す必要があります。このパターンの場合、船長を共犯にするか、船長を犯人に設定する方が無難です。
2位茨城の夜イカ船
大原の船のケースと違って、こちらは帰りの航行時間を利用して犯行を実行します。ポイントまでかかる時間は1時間半から2時間。犯行を行う時間はたっぷりあります。
ただし、こちらも欠点が1つ。夜イカ船は人気があり、特に絶好調の年は平日でも満席になるほど。低調な年の平日を犯行の実行日に設定する必要があることをお忘れなく。こちらも、船長や仲乗りさんを共犯に設定すると、尚可です。
1位銭洲・イナンバ遠征船
夜中に出港し、沼津からなら片道4時間以上。海は暗く、船は高速船。船長も移動中は、船の後方に注意を払うことなどしないでしょう。
しかも、移動中を利用して全員船の中で一泊が基本。乗船前、泥酔させておけば尚可となります。そして万が一、行きに失敗しても、帰り道に犯行を行うことも可能。釣り人は皆、帰りの運転のためにキャビン内のベットで横になるので、明るくても実行は可能だと思われます。
殺し屋が主人公、もしくは主人公が殺し屋から狙われる設定なら、そこそこハラハラする展開に持ち込めそうです。そして何より、銭洲やイナンバを殺人現場にするだけで絵になりますよね。
釣り船ならではの問題点もあり
細かい内容は控えさせていただきましたが、素人の筆者が想像するに、「暗い海に誰にも見られずに落としてしまえば、それで完全犯罪はほぼ成立。警察は事故として処理するだろう」といった流れ一択で物語は進んでいくのではないかと考えてしまうわけでして。
というわけで、釣り船での殺人事件はあまりにも簡単すぎて、ミステリー小説の花である「難解なトリック」が必要なくなってしまうような気も。今の所、釣り船ミステリーは長編物語にするには難しいシチュエーションだという結論です。
<尾崎大祐/TSURINEWSライター>