ルアーの歴史をさかのぼると二つの有名なルアーメーカーの話に突き当たると思います。それがラウリラパラの『ラパラ』とジェームスへドンの『へドン』です。今回は、スロープノーズの産みのメーカーへドンについて触れてみたいと思います。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・小塩勝海)
スロープノーズの特徴
ここからは、スロープノーズの特徴を解説します。
シャンプーハット
このシャンプーハットは、スロープノーズ最大の特徴で、生き物が発生させる振動や音を再現して魚にアピール。ルアーが前側に滑らないで、一か所で何度も動かして魚を誘うことが可能です。
現代のルアーのラインナップにも十分組み込める使い分けの幅があるものだと思います。
スロープした先端
スロープノーズの語源にもなったこの鼻先は、ルアーをアクションさせたときに鼻先が水の抵抗で持ち上がるのが特徴。
ボディーが水中に潜り込みにくくなり、ボディー全体で水を押し出して強い水の押込みを発生させられます。更に鼻先で水を叩くような動きになるので生き物的な複合的な水音を出せます。
トッププラグを始めとしたルアーの特徴が最も出るのは鼻先のデザインです。糸から入力されたアクションを一番先に受ける部分であり、受けた水の抵抗がルアーの全身の挙動に繋がることを考えると、鼻先のデザインに拘りをもって世に放出したへドンさんは、現代のアングラーも多くを学べる程にルアーに対する見識は深いのだと実感します。
ブルーヘッドの意味
現代のアングラーでも迷う要素のひとつがルアーのカラー選択。へドンさんはこの一つの選択肢を120年も前に私達アングラーに提示してくれています。
今はほとんど見ることがないブルーヘッドというカラーですが、これはレッドヘッドの色違いではありません。ブルーヘッドは、魚の視界上にルアーを置いたときに魚から見える背景色。つまり、空と水面の色を溶け込ませたカラーなのです。
このスロープノーズを空にかざしてみると、曇りのときは白い光にボディーのシルエットが溶けて見えます。

一方で、青空には頭のブルーが溶け込むようになっています。これが水中のような光の反射が不規則な世界に投げ込まれると、シルエットが溶けたり浮かび上がったりするのです。

スロープノーズはトッププラグなので、ブルーヘッドだけでも十分面白くて実践的。これをジャークベイトやクランクベイトと仮定してもこの色の選び方は使えます。水面以外でも同じ効果を期待できるでしょう。
例えば、水深2mの沈みものに魚が多く付いていて、ベイトフィッシュの層がその少し上の1mを泳いでいるとします。その場合、下から上にバスの視線があるので、下側から見えるお腹や側面を水の色や1m付近のカバーの色などに合わせたり逆に目立つような反対色にしたりすると魚への見せ方を変えられます。
アクション特性
ここからは、スロープノーズのアクションについて深掘りしていきます。
強く水を噛み込む
スロープノーズは、シャンプーハットのおかげで強く水を噛み込むようなアクションが特徴。ロッドワークをうまく使うとチャガー音のような低くて大きな音と泡を発生させたり、スプラッシュを大きく飛ばすことも可能です。
スライドアクションがあまり起こらない仕様なので、ペンシルベイトというよりもポッパーに近い感覚です。ポッパー程音を出す性能に特化していないため、ペンシルベイトとポッパーの中間的なアクションだと考えて使い分けるのもいいですね。
ペンシルではスライドしすぎてしまい、ポッパーでは水を押込み過ぎて食いが悪い場面などで活躍が期待できます。
歴史を知って明日の釣りを豊かに
ルアーには設計者が考えた魚の騙し方がルアーのデザインに多く反映されており、ルアーの誕生秘話や作られた理由を掘り下げると思わぬ魚へのアプローチ方法を見出すことが出来ます。設計者の意図を理解すると、隠された性能をひきだすことができるでしょう。
ルアーはバスを騙し切る道具である
今回の記事を書くにあたって、山中湖で一日スロープノーズを使って釣りをしてきました。夏の暑さと遠浅の山中湖は相性が悪く地面から照り返す熱を嫌ってシャローに魚が極端に少ないです。
このルアーの特徴は水をしっかり噛み込んでしっかりと水面でアクション出来ること。この日は水深3m付近のエリアからバイトを取れましたが、ライズした時に外れてしまいました。
残念な結果でしたがこのルアーの良さを実感出来て満足感はありました。魚に対してどんなところからどんな風に振り向かせてどこで食わせるかを意識して釣りをすると、釣りの世界が広がり面白くなると思います。

<小塩勝海/TSURINEWSライター>