海洋のマイクロプラスチック問題が深刻化する中、いま「漁具のリサイクル」に熱い視線が浴びせられています。
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水族館で「廃漁具製」ファッションアイテムが展示
大阪の水族館「海遊館」で先日より、とあるユニークなイベントが実施されています。それは「海に漂うプラスチックごみなどを再利用して作られた」服などの展示です。
海洋の環境保全に取り組むファッションブランドとのコラボレーションで実現したこのイベント。海洋プラスチックごみや海岸に漂着した漁網などの素材をリサイクルして作られた製品が数多く並べられています。
進む「漁具のリサイクル」
実は今回の例に限らず、いま我が国では様々な「廃漁具」をリサイクルする動きが出ています。中でも注目されているものの一つに「漁業で用いられるウキ」があります。
各種漁業で用いられるウキは、その多くが発泡スチロール製です。浮力が高く視認性も良いため盛んに利用されているのですが、耐久性に劣る部分があり、数年で交換・廃棄されます。しかしこのようなウキはサイズがとても大きく、また大量に使用されるため廃棄物の量が多くなり、その処理費用は漁業者にとって大きな負担となっています。
その一方、石油製品である発泡スチロールは高いカロリーをもちます。そこで最近では廃ウキをペレット状に加工し、燃料として利用する活動が行われているのです。
折からの原油高やエネルギー価格の高騰もあり、廃ウキ製燃料は十分な需要が見込めるとみられています。
漁具リサイクルのワケ
2016(平成28)年度の環境省による海洋ごみ調査によると、日本に漂着するプラスチックごみの総重量のうち、約4割が廃漁網など漁業関係のものです。漁具の大部分はナイロンやスチロールなどプラスチック製であり、海上・海中に設置されることもあって、マイクロプラスチック排出源としては最大のものとなっています。
加えて、海洋は塩分と紫外線が無限に降り注ぐ厳しい環境です。変質しにくいことが売りのプラスチックでも、これらの要素によって分解されやすくなってしまい、これもマイクロプラスチックを生み出すことに繋がってしまっているのです。
廃プラスチック問題で注目されがちなのは食器類をはじめとした使い捨てプラスチックですが、マイクロプラスチック問題の解決を目指す上で最大の課題となるのはこれら廃漁具であり、その再資源化は最も喫緊の課題であるといえるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>