冬に美味しいおでんの主役といえば、魚のすり身を使った練り物。ですが今年の冬はもしかすると、美味しいおでんが食べられなくなってしまうかもしれません。
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全国に広がる鶏卵不足と価格高騰
様々なメディアで報道されている、鳥インフルエンザ禍による鶏卵不足。春が近づき気温が上がってきても、なかなか終息の気配がありません。
今季の鳥インフルエンザ被害は過去最悪レベルで、殺処分された鶏の数は2020年度の987万羽を大きく上回り、1500万羽に達しています。
卵を採るための鶏も大量に殺処分されてしまっていることに加え、折からの輸入飼料価格の高騰もあり、鶏卵の卸売価格は上昇の一途を辿っています。今月初頭の東京における鶏卵の卸値(Mサイズ1kgあたり)は前年比1.86倍の335円を記録し、過去最高値水準となりました。
海外からの渡り鳥が北へ帰る3~5月までは鳥インフルエンザの流行は止まらない可能性があり、そうなるとこの価格高騰も長引いてしまうかもしれません。
練り物業界にも影響が
さて、この卵不足と高騰により、今ちょっと意外な業界に影響が出ています。それは「練り物業界」。
かまぼこや伊達巻など、魚のすり身を使って作られる練り物製品において、鶏卵は欠かすことのできない原料。そのため鶏卵が高騰すると、必然的に練り物の価格も高騰することになってしまうのです。
安価で美味しいというイメージの強い練り物製品は、少しの価格上昇が販売不振に繋がります。そのため鶏卵の価格上昇をなかなか製品価格に転嫁できず、またそもそも鶏卵自体の不足により作りたくても作ることができないなど、業界全体として苦悩を抱えているようです。
おでんが気軽に食べられない
実は今回の鶏卵不足が始まる以前から、練り物業界は実はすでに苦境に陥っていました。
魚のすり身における最大の原料である「スケトウダラ」は現在、国産資源が乱獲などの影響で非常に低水準となっており、輸入に頼っています。しかし近年、世界的にスケトウダラの需要が高まっている現状があり、原料価格が高騰し、国際的に買い負けてしまうことも増えている模様。そこに今回の卵不足が追い打ちを掛ける形となってしまったのです。
今年の冬は気軽におでんを食べられなかった人もいるかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>