かまぼこ、はんぺん、魚肉ソーセージ……庶民の味方というイメージが強い「すり身製品」ですが、実はいま、それが過去の話になろうとしています。
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練り物商品が高騰の予測
冷食メーカーの日本水産が先月19日、家庭用のすり身製品と冷凍食品の計113品を来年から約4~13%値上げすると発表し、話題になっています。業務用の冷凍食品179品も約1~13%引き上げるとのことです。
すり身はここに至るまでも断続的な値上げが続いており、食品業界からは原料高への悲鳴が上がっています。一昔前の倍近いという話もあるようです。
すり身といえばかつては「安くお手軽な食材」というイメージだったのですが、なぜこのようなことになっているのでしょうか。(『すり身や冷凍食品値上げへ 日本水産、来年2月から』共同通信 2021.11.19)
主原料の白身魚に異変
すり身の主原料となるスケトウダラをはじめとした白身魚は近年、その栄養価の高さ、高タンパク低脂肪というヘルシーさから、これまで魚の消費量が多くなかった欧米を始め世界各地で需要が高まっています。
その一方、主要産地である北米や北欧では、漁獲される魚の多くが小ぶりなものとなっており、漁獲数自体も減少しています。すり身の価格高騰はこれらの煽りを受けたものなのです。
さらに加えて、円安により日本の流通商社の購買力が下がってしまっており、中国など経済力のある他国に買い負けている状態が続いています。加工に関わる人件費や物流費も上昇しており、価格を押し上げる要素しかないというのが現状なのです。
高騰著しい年末商材
御存知の通り、年末年始はごちそう需要やおせち需要で高級魚介類の消費量が増える時期です。しかし残念なことに、今それらの多くが高騰中となっています。
代表的なものがイクラ。道東地区で9月より発生している赤潮により、秋鮭漁が壊滅的な状況になっているなか、その子であるイクラも記録的な高値になっています。
赤潮の影響は道東地区の主要漁獲物であるウニ・カニも直撃しており、最大輸入先であるロシアでの不漁も相まってこちらも記録的な品薄・高値状態が続いています。
これに加えて上記の通りすり身が高騰していることから、これを原料とするかまぼこや伊達巻といった年始に欠かせない食材も高騰することが見込まれます。庶民にとってはここ数年ない厳しい年末年始となるかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>