安価で味もよく、いろいろな料理に使えて便利な「すり身製品」。しかしここのところ、世界での「原料需要増」の煽りを受け、価格が高騰しているといいます。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
「練り物」が高値に
コロナ禍が続く現在、「巣ごもり生活」で手軽に調理できると人気が高まっているのが、かまぼこ、ちくわ、はんぺんなどの「練り物」。そのままでも食べられるほか、焼き物、煮物、炒めものなど様々な料理に用いることができる、日本伝統のファストフードです。
しかしそんな練り物がいま、この10年で一番と言われる高値になっています。その原因は、原料となる魚の価格が高騰しているため。
国内で消費されるすり身の主な原料は、スケトウダラという鱈の一種です。食品卸大手によると、スケトウダラのすり身の価格は2011年秋から上昇傾向にあり、今年春には過去10年で最高値となったのだそうです。今後、秋にかけてさらに30円ほど上がる見込みといい、製品の小売価格にも影響が及ぶのは必至の情勢です。(『練り物の原料“すり身”高値 食卓へ影響は』日テレNEWS24 2021.7.2)
需要増とコロナのダブルパンチ
しかしなぜコロナ禍のいま、そのような価格上昇が起こっているのでしょうか。
練り製品の世界最大の消費国とされる日本ですが、実はすり身原料の多くを輸入に頼っています。そしてそのほとんどを米国産のスケトウダラが占めているのです。
現在、世界的な健康志向もあり、欧米や中国で魚の消費が増えています。それに伴いスケトウダラの魚価が高騰しています。そこに世界的な物流費や人件費の上昇が重なり、加えて今はコロナ禍が原因の「コンテナ不足」による輸送コストの値上げまでもが重なり、すり身の価格高騰が止まらなくなっているそうです。
世界で人気の「surimi」
ところで話は少し変わりますが、「スリミ」という言葉がワールドワイドであることをご存知でしょうか。その知名度はスシ、サシミに並ぶともいわれています。
しかしこのスリミ、我々の知る「魚の身をすりつぶしたペースト」とは違うもので認識されています。海外でsurimiという場合、その多くは日本で言う「カニカマ」のことを指すのです。つまりはそれだけ「カニカマ」が世界的な存在であるということが言えます。
世界の年間カニカマ消費量はなんと50万tに及びますが、更に驚くことに、その3分の1弱は欧州で消費されています。とくに消費量が多いのがフランスで、日本に並ぶ5万tが1年間で消費されています。またアメリカでは、日本を上回る6万tものカニカマが食べられているといい、もはやカニカマは「日本料理」とは言えない状態になっています。
ちなみにフランスのカニカマは、日本でおなじみの赤ではなく、現地で消費量の多いカニの色に合わせた「オレンジ色」のものが多く売られています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>