せっかく釣ったサカナはなるべく最高の味で食べたいですよね。となると「なるべく早く鮮度のいいうちに」と思ってしまいそうですが、実はその考え間違っているかもしれません。
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鮮度が命なのは正解
「釣ったサカナはなるべく早く新鮮なうちに食べないと!」そう思っている人は多分かなり多くいると思います。この考えは間違っていませんし、釣ったサカナを美味しく食べるうえで鮮度は非常に重要なポイントです。
そのうえで重要なのは釣ったサカナを新鮮なうちに適切な処理をするということ。
この処理を間違えてしまうと、鮮度の良かったサカナも美味しくなくなってしまいます。
釣ったサカナは暴れさせない
釣りというのは「強烈な引き味」を楽しむものでもあると思いますが、この強烈な引き味はサカナの旨味をどんどんと減らしてしまっています。
サカナが激しく暴れるとエネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)が消費されて筋肉に乳酸が蓄積し、身(筋肉)のpHはどんどん下がっていきます。このpHが下がることで身は酸性に傾きより味もより酸味が増してしまいます。
これはサカナが大きければ大きいほど著しく、白身よりも赤身のサカナで顕著に表れます。
また、釣り上げてから地面に置くとサカナはピチピチと飛び跳ねますよね。この時間が一番消耗が激しく、時間が長ければ長いほどが身の質をドンドン下げてしまうので、釣り上げたからはなるべく早く処理する必要があります。
旨味のできるメカニズム
ではサカナの旨味というのはどのようなメカニズムで生まれるのでしょうか。
まずサカナの死後、サカナのエネルギー源であるATPは鮮度低下に伴い、以下のように変化していきます。
ATP→ADP(アデノシン二リン酸)→AMP(アデノシン一リン酸)→イノシン酸→イノシン→ヒポキサンチン
この中の「イノシン酸」がいわゆるサカナの主な旨味成分であり、イノシン酸が一番多いタイミングで食べると非常に美味しいと感じることが出来ます。
また、イノシン酸も時間の経過でさらに変化していき、ヒポキサンチンにまでなると旨味は苦みに変わり、腐敗が始まっている段階として生食は難しいタイミングとなります。
このメカニズムは身の食感にも関係があり、釣り上げた直後はどのサカナの身も歯ごたえはしっかりしています。歯ごたえのある刺身を好む人はなるべく早い段階で食べるとよいでしょう。
しかし、イノシン酸は少なく旨味はやや薄め、そしてイノシン酸が増してくるとともに、身の弾力は減っていき、ピーク時はねっとりとした食感に変化していきます。
釣った魚をおいしく食べるための方法
一般的には釣り上げたサカナは適切に締めて、すぐに血抜きをし、冷却するのが良いとされています。
釣り上げたサカナはなるべく早く、目の後ろ付近を刃物で突き刺すなどして締め、暴れないようにしてください。
そして、もし可能であればピアノ線などで脊髄を破壊しましょう。
実は暴れないように締めるだけだと、サカナは脊髄反射によってわずかに痙攣を続けてしまいます。この痙攣もATP消費に繋がってしまうため、脊髄を破壊することでこの痙攣を抑止することが出来ます。
そして、エラ下の血管を切ったり、尾部に包丁で切れ目を入れて血抜きをすることで、死後強直や身の軟化を防ぎ、血生臭さを低減したり、肉色を綺麗にすることが出来ます。
最後に氷水等でサカナを冷却することで、適切に処理された鮮度のよい状態を長時間保つことが出来ます。
自分の好みを見付ける
先述の方法は釣り上げたどの魚種でも美味しく食べる方法に繋がります。
しかし、ATPが分解して旨味成分のイノシン酸が生産されることはどのサカナでも同じですが、イノシン酸のまでの分解速度や食感は、魚種や大きさ、生活環境、季節、など多くの要素によって異なります。
「歯ごたえがある方が好み」「ねっとりと旨味を感じたい」など自分好みのタイミングを見付けることが釣り上げたサカナを美味しく食べるうえでとても重要なのです。
<近藤 俊/サカナ研究所>