カツオのようでカツオではなく、なのにカツオと呼ばれ、そしてカツオより美味いとも言われる今注目の魚「スマ」。一体何者なのでしょうか?
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
レア魚「スマ」が回転寿司に登場
大手回転寿司チェーン「くら寿司」が今月2日「スマ」という魚の寿司の販売を開始し、話題となっています。このスマは天然物ではなく、AIなどを活用して養殖した「AIスマガツオ」というものです。
スマはカツオに似た魚で水揚げが少なく、大都市の鮮魚店に流通することはまれ。そのため知名度は低いのですが、食味がよく、また孵化してから半年で出荷サイズになるという成長速度の速さが評価され、養殖魚として注目されつつある魚です。
「AIスマガツオ」は、くら寿司の子会社が、愛媛県や愛媛大学南予水産研究センター、地元の生産者と連携し、AIでエサやりを自動化する「スマート養殖」を活用して生産しています。12月15日までの期間限定で販売され、好評だったようです。
スマとは何者か
スマはマグロやカツオと同じサバ科の魚で、カツオによく似た見た目をしています。カツオと違い背中に縦縞模様があるので「縞ガツオ」が訛ってスマガツオとなったという説があります。一方、死ぬと腹部にお灸の痕のような黒い斑紋が出るのでヤイト(灸)ガツオと呼ぶ地域も少なくありません。
スマは天然の水揚げ量がカツオと比べて非常に少なく、また鮮度落ちも早いため流通に向かない魚とされてきました。そのことから、大都市の市場にはほとんど出荷されず、主に水揚げされた産地で消費される希少な魚として、一部の通のみが賞味してきました。
スマの最大の魅力は脂乗りの良さ。「全身トロ」ともいわれるほどで「幻の美味」とも呼ばれてきましたが、今後養殖ものが一般的になれば、より身近な存在となるかもしれません。
スマに似たサカナ
さてこのスマですが「ヤイト」と呼ぶ地域があるのは上で述べた通りです。そして、そのような地域ではこのスマとは別の魚を「スマ」あるいは「ソマ」と呼ぶ場合があります。
その魚とは「ヒラソウダ」。こちらも「ソウダガツオ」と呼ばれるように、パッと見はカツオに似た外見をしています。カツオと比べるとやや小型ですが、こちらもスマ同様に脂乗りがよく、旬の時期は脂肪のせいで真っ赤なはずの身がピンク色に見えることすらあります。こちらも知る人ぞ知る美味という立ち位置です。
スマとヒラソウダは、いずれも「本家より小型で、脂乗りの良いカツオに似た魚」という特徴を持つことからしばしば混同されており、それがスマという共通の名前を持つ理由となっているのかもしれません。鮮度落ちが早くあまり流通に乗らないために一般的な知名度が低いという点も一緒です。ただしヒラソウダは養殖はされておらず、そのトロっぷりを味わいたければ産地まで赴くしかありません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>