記録的な暖冬が続き、それに伴う様々な現象が報告されています。我々の食べるサカナにも、その影響を受けるものはあるのでしょうか。
(アイキャッチ画像出展:PhotoAC)
「関アジ」「関サバ」:フグに邪魔される?
ちょっと変わったところでは、有名なアジ・サバのブランド「関アジ、関サバ」も今年の冬は不漁だったそうです。その理由もまた海水の異常な高温にあるのですが、アジやサバはサンマと違い高水温を嫌わず、水温が高かったからと言っていなくなってしまったわけではありません。
不漁の原因になっているのはなんと、フグ。関アジ、関サバが棲息する豊後水道では、通常では10月頃に姿を消すクロサバフグが、水温が下がらないためか11月以降も異常発生しており、漁の邪魔になっていたといいます。関アジ、関サバは一本釣りで漁獲され、1匹ずつ丁寧に処理されるのでブランドとなっているのですが、その釣り針をクロサバフグが鋭い歯で次々と食いちぎってしまうそうです。(『大分合同新聞』2019年11月24日朝刊1面「クロサバフグ異常発生 豊後水道、漁具に被害続出」)
フグといえば近隣の下関が有名ですが、そこで取引される高級魚のトラフグとは違い、クロサバフグは漁業価値はほとんどなく、漁師さんは頭を抱えるばかりだと言います。
温暖化対策をしつつ現状に適応しよう
ここ1、2年の様々なデータを見るだけでも、以前との明確な違いに気づくほど、水温上昇の影響は加速度的に進んでいます。カレイやアイナメのような低水温を好む魚たちが関東以西の海域からどんどん駆逐されていくのを感じ、寂しくなることもあります。
一方で東京湾奥でタチウオやブリが釣れ盛ったり、知多半島・豊浜港でイワシが連日大漁になっているのがニュースになるなど、新たに釣りや漁のターゲットとなる魚が出てきているのもまた事実です。
我々としては、まずは温暖化・暖冬を食い止めるべく日常生活を見直すとともに、これまでの「旬の魚・季節のターゲット」の認識を今一度刷新し、その時手に入りやすく美味な魚たちを探していく、というのも必要になっているのかなと感じます。
減っている魚を無理に漁獲しても、彼らをより厳しい状況に追いこんでしまうことになりかねないですからね。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>