昨シーズンの日本全国でのシラスウナギ採捕量は過去最低の3.7t。でも、ご安心を!今シーズンはすでに昨年の数倍の採捕量となっています。ウナギ好きの日本人にとっては気になる、シラスウナギの生態~問題点、さらには蒲焼きの価格について説明します。
(アイキャッチ画像出展:photoAC)
シラスウナギを取り巻く問題
シラスウナギは漁獲量が減っているだけではなく、密漁や過少申告、不透明な流通ルートなど多くの問題を抱えています。
密漁が横行
前述の通り高値で取引され、装備も比較的手軽に揃えることができます。また買い取り手がいるため密漁が横行しています。刑罰が懲役6ヶ月もしくは、10万円以下の罰金と、見方によっては軽微なため、なかなか歯止めが効かないのが現状です。
そのため、2023年から懲役3年以下または3千万円以下の罰金と罰則強化が予定されています。
流通ルート
流通ルートも様々で、個人~漁協組合員、養殖業者など採捕者が多岐に渡り、集荷業者も問屋や漁協、商社など多岐にわたります。これらの企業や全国で26か所にある漁協などの流通業者へ流れていきます。最後に全国473件の養殖業者へたどり着きます。
シラスウナギの問題点としては、複雑で視覚化しにくいルートで、なおかつ採捕者が全国で約2万人存在することが挙げられます。また1日当たりの一人の採捕数量が、数gと少量になることから、採捕量を管理することが非常に困難なことも影響しています。
実際に平成31年漁期はシラスウナギの国内採捕報告数量2.2t、輸入数量11.5t、合計13.7tに対し、養殖業者のシラスウナギ池入報告数量は15.2tであり、10%ほどの差が生じています。
原因は、密漁や指定出荷先以外への横流し、採捕量過小報告などが考えられ、ウナギ業界の闇の部分とも言えるでしょう。
過去5年間の動向
平成26年~平成31年の採捕量を確認すると振れ幅が大きいが、平成26年以前の好調、低調なシーズンどちらも比較すると全体的に下降している状態が見受けられます。さらには、昨年は国内採捕量が3.7tと過去最低となってしまいました。
水産庁ではウナギ関する情報というページでウナギの情報発信をしているので、詳しい情報を知りたい方は目を通すことをおすすめします。
今シーズンV字回復傾向あり
今回、ウナギ生産量上位4県のシラスウナギ採捕量が今年はどのように変化したのかを各県の水産課へ電話での取材を行いました。
水産課によると掲載していない県も不漁は免れ、全国的に昨年度を大幅に超える形で全体的に出だしから採捕量が多くなっているようです。
解禁後の概況
静岡県では、通年12月~4月末の漁期で昨シーズンの総合採捕量が478.8kg。昨シーズンの1月末までの採捕量は110.2kgで、今シーズンは1077kgと約10倍の漁獲量がでています。平成26~30年の1月末までの平均405.7kgと比較しても多いことがわかります 。
また、同県の養鰻(ようまん)業者が所持するシラスウナギ専用イケスが満タンになってしまい、1/28から漁を中止しています。イケスが2月末ごろから空くためそのころ再開予定となっているようです。
愛知県では、通年12/16~4月末の漁期で昨シーズンの総合採捕量が391.1kg。昨シーズン12月中採捕量は3.5kgで、今シーズンは29.2kgと約8倍の上昇をしています。
宮崎県では、昨年度漁期12/2~3/16までの間で総合採捕量が73kg。昨年度漁期12/2~1月末で24kgに対し、今年度は12/21~1月末で140kgと約6倍上昇しています。漁期が短いにもかかわらず、採捕量が昨年度合計の倍近い数値になっています。
鹿児島県では、昨年度漁期12/15~3/31(漁実施日数は90日)で総合採捕量が136kg。昨年度の1/30までの30日間で36.1kg。今年度は30日間で252.1kgと約7倍の上昇をしています。
好調の理由
ウナギの採捕量を見てみると大きな波があるのは見てとれます。昨年があまりに不漁で相対的に好調に見えるというのもありますが、生態の研究が進んでいないため、なぜ昨年と比べて好調なのか、実は誰も分かっていません。海流や海水温、生存個体数などなにが原因であるかは今後、研究が進めば少しづつ分かっていくでしょう。