貝の食中毒原因物質として知られるノロウイルス。先日「シラス」から検出され、大きな騒ぎとなっています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
集団食中毒の原因は湘南名物「生シラス」?
秋晴れが続き、観光客やサーファーでにぎわう一大観光地「湘南海岸・江の島」。ここで先日、集団食中毒事故が発生し、大きなニュースとなってしまいました。
食中毒事故はまず、江の島周辺の海鮮料理店で9月下旬に発生。その後、近隣のしらす料理専門店でも発生し、地域が大きな不安に包まれました。
シラス丼(提供:PhotoAC)いずれのお店も、提供の目玉となっているのが湘南海岸の名物となっている生シラスを使った丼料理でした。そのため生シラスが食中毒の原因になったと目されたのです。
原因はあのウイルス
神奈川県や藤沢市の発表によると、患者の症状や喫食から発症までの期間、さらには患者の便の調査により、原因は「ノロウイルス」であると判明したそうです。
ノロウイルスといえば、冬場に多く発生するウイルス。秋がまだ深まる前、気温も25度以上あるこの時期に発生したことから、意外さを感じている人が多いようです。
生牡蠣(提供:PhotoAC)また、ノロウイルスといえば「生牡蠣」を連想する人も多いと思います。生の貝ではなく、シラスが原因になったという点も不思議に感じられているようです。
なぜシラスから?
実際のところ、ノロウイルス中毒はあらゆる海産物においてそのリスクを排除できません。このウイルスは海水中に放出されても不活化することはなく、カキのような二枚貝に取り込まれればその内臓に蓄積しますが、魚の体内に取り込まれればそこに蓄積します。シラスは餌のプランクトンを海水ごと飲み込むため、その際にノロウイルスが取り込まれてしまう可能性はあります。
ノロウイルス中毒症の原因となった食べ物を調べると、そのほとんどが生もしくは加熱不十分な二枚貝によるものですが、それ以外の食材を原因とするものも発生しており、シラスが原因になっても全くおかしくありません。
新鮮でも、シラスでもリスクはある(提供:PhotoAC)なおノロウイルスそのものの発生源は、中毒症患者の排泄物であることが多いです。そのため下水中にはノロウイルスが多く含まれており、これが何かのきっかけで海中にそのまま放出されれば、当然その海域におけるノロウイルス感染症のリスクは上昇します。
SNSでは今回のノロウイルス中毒症同時多発現象を、今夏繰り返し発生した豪雨により下水が十分に処理されないまま海中に放出された可能性と結びつけて論じる声も大きいようです。この意見は確からしく見えますが、実際のところ関連性は明らかにはなっていません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>


