『ホゲる』『ツ抜け』『ナブラ』って何? 釣り人が使う不思議な言葉の意味と由来を解説

『ホゲる』『ツ抜け』『ナブラ』って何? 釣り人が使う不思議な言葉の意味と由来を解説

「ホゲる」「ツ抜け」「ナブラ」など、釣り人が何気なく使う独特な言葉。意味を知っていても、その由来までは知らない人も多いのでは?釣果や魚のサイズ、自然現象、道具にまつわる釣り用語を、筆者の経験も交えて紹介する。

(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・りおまいのりお)

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りおまいのりお

元バスプロが博多湾の四季の釣りをロジカルに攻略。エギング等を愉しむ大人の知略フィッシングを提唱。

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釣り用語はアングラーが紡いできた文化

釣りをしていると、思いがけない言葉や独特で謎めいた釣り用語に出会う。釣れなかったときの自虐的な表現、トラブル時の用語、魚の訪れを知らせる自然からのサイン。さらには、釣れた魚のサイズや道具にまつわる言葉まで、その種類は実に多い。

これらは単なる専門用語という枠を超えて、アングラーたちが現場で紡いできた生きた歴史を感じさせる。釣り用語は、まさに文化そのものだと言えないだろうか。

語源は由来は諸説あり

今回は、知っているようで意外と知らない釣り人たちの「謎の用語」を、ちょっと深掘りして覗いてみたい。なお、紹介する語源や由来には諸説ある。筆者が長年の釣り歴の中で実際に耳にしてきた話や見解も交えているため、ひとつの解釈として楽しんでいただけたらと思う。

釣果とメンタルを映す言葉たち

釣れない現実や根掛かりの絶望を、思わず笑いに変えてしまう釣り人たち。まずは、そんな釣果と自虐にまつわる言葉を紹介しよう。

ホゲる

魚が1匹も釣れなかったことを意味する、いわゆる「ボウズ」のこと。語源は、九州地方の方言で「穴があく」を意味する「ほげる」に由来するという説がある。まったく釣れずに「釣果ゼロ」という結果を自虐的に笑う、釣り人の日常用語だ。ベテランが使っても、どこか哀愁と笑いが漂う。

ボウズ

魚が1匹も釣れなかったことを意味する。髪の毛がない坊主頭と、釣果がゼロであることを掛けたという説や、僧侶の不殺生に由来する説など、語源には諸説ある。日本人のダジャレ文化を感じさせる、釣り用語の大定番ワードだ。

地球

海底の岩や障害物にハリが引っ掛かる「根掛かり」のこと。大物が掛かったと思いきや、実は地球そのものを釣っていたという釣り人の自虐だ。「地球を釣ってしまった」という絶望的なセリフを、なぜかどこか誇らしげにつぶやいてしまうのは、アングラー共通の心理ではないかと思う。

ツ抜け

魚が10匹以上釣れることを意味する言葉。1~9の数え方である「ひとつ、ふたつ……ここのつ」には「つ」が付くが、10の「とお」になると「つ」が抜けることに由来するとされる。日本語の数え方をベースにした、論理的で風情のある釣果表現だ。

釣り場のトラブルを表す言葉

釣り場で起こるトラブルにも、独特な呼び名がある。冷や汗が出るような場面を、少しだけ和らげてくれる言葉たちだ。

お祭り

自分と他人の釣り糸(ライン)が絡まってしまうトラブルのこと。複数の糸が複雑に絡み合い、賑やかに(?)もつれてしまう様子を祭りに例えたのだろうか。本来なら喜ばしい「お祭り」だが、釣りにおいては全然喜べない。

隣の人と盛大にラインが絡まった絶望の瞬間を「お祭りですね」と言い換えることで、険悪なムードを回避した先人たちの知恵なのかもしれない。

ももる

釣り糸がぐちゃぐちゃに絡まってしまうライントラブルを表す言葉。特にスピニングリールで起こるトラブルを指して使われることがある。語源には、糸が丸く膨らんで絡まった塊が果物の「桃」に似ているという説や、西日本の方言「ももける」から変化したという説などがある。

海の変化を知らせる言葉たち

釣り人が胸を躍らせる瞬間にも、さまざまな用語がある。自然の変化や魚の行動を表す言葉を見てみよう。

乗っ込み(のっこみ)

魚が産卵のために深場から浅場へ移動してくることを指す。語源については、漁師が漁を切り上げて港へ入る「乗り込む」という言葉に由来するという説もある。人の行動を表す言葉が、魚の移動を表す言葉へと変化したのだとすれば、なかなか興味深い。

ナブラ

青物などの大型魚に追われた小魚の群れが、海面で激しく波立っている状態を指す。もともとは漁師言葉とされ、「魚(な)」と「群れ・村(むら)」が合わさった「なむら」が変化したという説がある。

古い文献に見られる「なむら」という言葉との関係も指摘されており、長い年月を経て釣り人に受け継がれてきた言葉なのかもしれない。

居着き(いつき)

広い範囲を回遊せず、特定の根や障害物の周辺にとどまっている魚を指す。「居る」と「着く」が合わさった「居着く」という言葉から来ていると考えられる。魚によっては、生息する場所の環境が体色などに表れることもある。昔の釣り人たちの観察眼を感じさせる言葉だ。

バチ抜け

ゴカイなどの環形動物が、繁殖のために海底から抜け出し、水中を泳ぎ回る現象を指す。このほかにも、水面下のざわめきや季節の移り変わりを知らせる自然のサインを言語化した釣り用語は数多く存在する。

魚のサイズを表すユニークな比喩

釣り人の想像力が特に発揮されるのが、魚のサイズを表す言葉だ。「コロッケ」「座布団」など、初めて聞いた人には釣りと結び付かないような表現も少なくない。

コロッケ/トンカツ

エギングで使われる、アオリイカの大きさを表す比喩。イカの丸みを帯びた形やサイズ感が、お惣菜に似ていることから生まれたとされる。「今のサイズいくつ?」という問いに「コロッケサイズ」で通じてしまうのだから、エギング界隈の秀逸な共通言語だと思う。

神龍(シェンロン)

タチウオ釣りで、特に大型の個体を指す俗称。指幅7~8本分、全長130cm超といった巨大なタチウオを指して使われることがある。漫画『ドラゴンボール』に登場する伝説の龍に由来するという説があり、ドラゴン級をさらに超えるような大物に対する、釣り人の敬意とロマンが感じられる。

座布団

70~80cmを超えるような大型のヒラメを指す言葉。平べったく、大きく広がった魚体が和室の座布団に似ていることから、こう呼ばれるようになったと考えられる。釣り上げた瞬間の喜びが伝わってくる、愛嬌のある表現だ。

ランカー

その魚種で特に大型の個体を指す言葉。英語で大きなものなどを意味する「lunker」に由来するとされ、バスフィッシングやシーバスゲームなどで広く使われている。魚種によってランカーと呼ばれるサイズの目安は異なるが、アングラーたちの心を燃やすステータスワードであることに変わりはない。

ゴンザレス

50cmを超える大型のブラックバスを指して使われる俗称。数字の「5(ゴー)」と人名の「ゴンザレス」を掛けた洒落ではないかと思われる。実は筆者には、この言葉にまつわる思い出がある。

1990年代の初め、琵琶湖で開催されたプロトーナメントの会場で、トッププロが検量時に「ゴンザレス!」「スーパーゴンザレス!」と言っていたのを、すぐそばで聞いていたのだ。

釣り用語が広まっていく現場に立ち会えたことは、個人的にも良い思い出である。魚の大きさを例えるとき、アングラーたちの想像力と比喩表現は止まることを知らない。

道具の名前に残る歴史の断片

現代のハイテクなタックルにも、昔の素材や道具作りに由来するとされる名前が残っている。普段何気なく使っている釣具の名前にも、先人たちの知恵や感性が息づいているのかもしれない。

タモ(タモ網)

魚をすくい上げるための網のこと。昔の網の柄や枠に使われていた「タモ(ヤチダモなど)」という木に、その名前が由来するという説がある。金属やカーボンなどの素材が使われる現在でも、道具の名前に昔の素材の記憶が残っているとすれば興味深い。

『ホゲる』『ツ抜け』『ナブラ』って何? 釣り人が使う不思議な言葉の意味と由来を解説なぜタモなのか(提供:TSURINEWSライター・りおまいのりお)

カンナ

エギ(餌木)やイカ釣り仕掛けの後方に備えられた、傘状に並ぶ複数のハリのこと。語源には、夏に花を咲かせる植物の「カンナ」に由来するという説や、木工道具の「鉋(かんな)」から来たという説などがある。鋭いハリが並ぶ形状から名付けられたとすれば、昔の職人たちの感性がうかがえる。

『ホゲる』『ツ抜け』『ナブラ』って何? 釣り人が使う不思議な言葉の意味と由来を解説ハリではなくカンナという(提供:TSURINEWSライター・りおまいのりお)

釣り用語を知れば釣りがもっと面白くなる

こうして振り返ってみると、釣り人たちが何気なく口にしている言葉の数々には、悔しさをごまかすユーモアや、自然の移り変わりに対する鋭い観察眼、そして道具への愛着がぎっしりと詰まっている。

次にフィールドへ向かったとき、隣の誰かがぼやく「ホゲた」という声や、水面に広がる「ナブラ」という言葉に、また違った味わいを感じられるかもしれない。釣りにまつわる言葉の意味や由来を知れば、私たちの釣りはまた少し楽しくなるはずだ。

<りおまいのりお/TSURINEWSライター>

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