お刺身をパックで買ってくると、だいたい入っている菊の花。実は商品の見た目をよくする以外にも理由があるのをご存じでしたか?
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お刺身に添えられる花「菊」
お刺身を購入してくるとほぼ必ず入っている花といえば「菊」。
タンポポに間違われることも少なくありませんが、刺し身などに添えられる菊の花は全て食用菊で、『秋月』という品種です。
菊の花が入っていることで、彩りが一層よくなりますが、じつは見た目をよくする以外にも効果があります。
添える理由1:殺菌
お刺身が広く食べられるようになったのは江戸時代後期と言われています。その当時、濃口醤油が誕生したことによってお刺身が庶民の間で人気となり、「刺身屋」さんが生まれました。
庶民にとっては、サカナをさばく手間が省け、手軽に買えることから非常に繁盛したそうですが、当時は今のような冷蔵技術がないため、時間が経ち鮮度が落ちたお刺身を食べたために、食中毒があとを絶たなかったそうです。
そのリスクを軽減すべく考えられたのが、奈良時代から薬として使われていた「菊」を付けて販売するというものだったのです。菊と一緒に刺し身を食べることにより、食中毒は減っていったと言われています。
また、同じような殺菌効果のある「わさび」「青じそ」「穂紫蘇(ほじそ)」「紅たで」なども同様にこの頃から添えられるようになったと言われています。
殺菌効果「グルタチオン」
先述の殺菌効果についてですが、菊には「グルタチオン」と呼ばれる成分が含まれており、これが殺菌効果があることで知られています。
現代ではその強い抗酸化作用を利用した美容系のサプリなどには必ず入っており、肌の老化防止などに効果が高いと言われています。
また、グルタチオンの解毒作用はアルコールにも有効で、飲酒前後にグルタチオンを摂取することで、二日酔いの予防などにも大活躍してくれます。
添える理由2:におい消し
お刺身は生ものなので、時間が経過することで独特の臭いが出てきます。
菊は香り高い花として有名で、お刺身に添えることで刺身の臭い対策として役立っています。
お刺身用に品種改良されている菊は、観賞用のものより香りが意図的に弱く、お刺身の皿に乗せても必要以上に主張せず、生臭さを軽減してくれています。
添えられる理由3:薬味
刺身に添えられている菊は彩りを良くしたり、におい消しの為だけではなく、食用菊として食べることもできます。
食用に栽培されているものは苦味が少なく、そのほのかな香りは刺身と食べると非常に合うと言われています。
刺身に添えられた菊を食べる場合は、花びらだけをむしって刺身醤油に添えて食べるのが一般的です。
最近はプラスチックのものが多い
最近では、お刺身にはプラスチックの菊の花が入っていることが多く、実際に菊の花を食べる機会はかなり少なくなりました。
本物の菊であればぜひ一緒に食べてみて欲しいものですが、なかなか難しいのが現状。
しかし、少し敷居の高いお上品なお店に行けば今でも、菊の花は添えられてます。ワサビやネギなどと同じように薬味としてチャレンジしてみて下さい。
<近藤 俊/サカナ研究所>