ブラックバスアングラーにとって「ロクマル」は特別な存在だ。60cmを超える1尾は、何年追い続けても出会えないことも珍しくない。筆者も2009年に人生初のロクマルを手にして以来、その魅力に取り憑かれてきた。そして今回挑んだのは、琵琶湖ではなく紀伊半島のリザーバー。長年の目標だった「琵琶湖以外でロクマルを釣る」という夢を胸にフィールドへ立った結果、奇跡が幾重にも重なり、63cmのモンスターバスとの出会いが待っていた。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・稲垣順也)
目次
ロクマルを追い続けた16年間
ロクマルとは60cmを超えるブラックバスのこと。全国のバスアングラーが一度は夢見るサイズであり、釣り人生の目標として掲げる人も少なくない。筆者にとって人生初のロクマルは2009年夏。琵琶湖南湖でキャッチした65cm・4550gのブラックバスだった。
仕事の都合で栃木へ転勤する前日、琵琶湖へ行ける最後のチャンスで手にした魚であり、今でも人生で最も感動した1尾として記憶に残っている。その後も琵琶湖では4匹のロクマルをキャッチすることができた。
そして2021年春、土日のおかっぱりデイゲームでロクマルを釣るという目標を達成したことで、新たな夢が生まれる。
・琵琶湖以外のフィールドでロクマルを釣る
それが、「琵琶湖以外のフィールドでロクマルを釣る」という目標だった。
初夏の紀伊半島リザーバーへ
各地で夏日を超え、真夏日も観測され始めた5月30日。筆者は紀伊半島のリザーバーへ向かった。今回の目標サイズは55cm。サイトフィッシングを中心に、デカバスだけを狙う釣りを展開する。
使用したタックル
- レイドジャパン グラディエーターテクニクス65L+S インターセプター
- DAIWA バリスティックFW2500S-CXH
- PE0・6号+リーダー6lb
クリアウォーターのリザーバーで、大型魚とのファイトも想定した筆者なりの限界セッティングだ。
朝6時半に最初のリザーバーへ
夏には多くの魚が差してくるバックウォーターからスタートしたが、この日は生命感が薄い。ポイントを回るものの先行者も多く、早々に見切りをつけて別のリザーバーへ移動した。
移動が奏功し30cm級バス手中
次に向かったのは過去に何度も大型魚を見ている人気リザーバー。しかし筆者にとっては相性が悪く、前週も40~50cmクラスを3本掛けながら全てバラしている。
まずは同じバックウォーターへ入り、O・S・Pドライブクローラー5・5inのネコリグで30cmクラスをキャッチ。
サイズこそ小さいが、まずは前週のリベンジを果たすことができた。しかしその後は魚影が消え、再び移動を決断した。
ファーストヒット30cmクラス(提供:TSURINEWSライター・稲垣順也)人気ポイントで小型のバスを追加
次に入ったのは下流域のワンド。足場が良く人気のポイントで、普段なら3~4人は入っている場所だ。しかしこの日は運良く無人だった。「これはチャンスかもしれない」、そう思いながら水面を観察すると、多数のバスが見える。
だが状況は甘くなかった。ルアーが飛んでくるだけで逃げるほどの激スレ状態だったのである。そんな中、増水によってできたシャローフラットでボイルが発生した。すぐにルアーを投げるのではなく、まずは観察する。
すると数匹のスクールがベイトをシャローへ追い込んでいることが分かった。タイミングを見てサイコロラバーのノーシンカーを投入すると、小型ながら1本をキャッチ。しかし狙いはその魚ではない。スクールの中に混じる大型魚だった。
デカバスのスクールを狙い撃つ
ワームをレイドジャパン・アジャストレートフローティング12inへ変更。
アジャストレート12in(提供:TSURINEWSライター・稲垣順也)岸際を観察していると、こちらへ向かって泳いでくるスクールを発見した。先頭には40~45cmクラスが3匹。そしてその後ろに、明らかにサイズの違うデカバスが2匹付いている。「来た」思わず心の中で声が出た。
ワッキーリグで狙う(提供:TSURINEWSライター・稲垣順也)回遊コースを予測し、先回りするようにアジャストレートをキャスト。水面でアクションさせながらスクールを待つ。まず先頭の40cmクラスが反応した。しかし次の瞬間、それを押しのけるように後方の大型魚が前へ出る。そして、「バフッ」という鈍い捕食音とともにルアーを吸い込んだ。
水面でシンプルなアクション(提供:TSURINEWSライター・稲垣順也)冠水植物に巻かれて始まった死闘
フッキング直後、魚は2度の大ジャンプ。それでもフックは外れない。見た瞬間に50cm後半は確信した。しかし次の瞬間、魚は岸際の冠水植物へ一直線に突っ込んだ。嫌な感触がロッドを通じて伝わる。
赤丸のところを潜られた(提供:TSURINEWSライター・稲垣順也)ラインが何かに触れている。「頼むから切れるな……」ドラグを緩め、走りが止まるのを待つ。だが魚は止まらない。20m近くラインを引き出してようやく停止した。
慎重なやり取りに徹する
そこからは慎重な攻防が続く。魚を寄せる時はリールを巻かず、自分が後ろへ下がる。魚が反転したら前へ出ながらラインを回収する。瞬間的な負荷を避けるための苦肉の策だった。何度も突っ込みをかわしながら寄せていく。そしてついに冠水植物の位置まで魚が浮いてきた。
しかし最後が抜けない。ロッド角度を微妙に変えながらテンションを掛け続ける。すると、スッと魚が障害物から抜け出した。勝負は決した。
草が絡んだ状態であがってきた(提供:TSURINEWSライター・稲垣順也)夢だった63cmロクマル
足元まで寄せた魚は最後のジャンプを見せたが、冷静にいなしてランディング成功。下顎を掴んだ瞬間、思わず声が漏れた。
拳が入る大きな口(提供:TSURINEWSライター・稲垣順也)「デカい……」いや、デカいでは済まされない。メジャーを当てる。63cm。長年追い続けてきたロクマルだった。しかも琵琶湖ではない。紀伊半島リザーバーでのロクマル達成である。
夢だった。本当に夢だった。撮影後は十分に蘇生を行い、魚を見送った。
夢を実現(提供:TSURINEWSライター・稲垣順也)ロクマル達成後燃え尽き症候群
車へ戻り、コーヒーを飲みながら写真を見返す。何度見ても信じられない。だが同時に、ある感情も湧いてきた。「この後、何を狙えばいいんだろう」。満足感が大きすぎて次の魚を追う気持ちが出てこない。
長年追い続けてきた目標を達成したことで、一時的に燃え尽きてしまったのである。しばらく考えた末、ヒットルアーのアジャストレートを補充しに釣具店へ向かうことにした。結局、筆者は釣れても釣れなくても釣具が好きなのである。
燃え尽きた……(提供:TSURINEWSライター・稲垣順也)ロクマル狙いの現実
ロクマル狙いは決して効率の良い釣りではない。個体数は少なく、フィールドも条件も選ぶ。通い続けても可能性を感じない時間の方が圧倒的に長い。だからこそ今回の63cmは奇跡の連続だった。
- 人気ポイントに先行者がいなかった
- 大型スクールが目の前を通った
- アジャストレートへ交換した直後だった
- 冠水植物に巻かれながらもラインが耐えた
どれかひとつ欠けていれば、この魚は手にできなかっただろう。当日もフィールドに捨てられていたラインやタバコの吸い殻を回収しながら釣りをしていた。そんな些細な行動に対して、紀伊半島の女神が少しだけ微笑んでくれたのかもしれない。
長年追い続けた「琵琶湖以外でのロクマル」という夢は叶った。だが釣り人とは欲深い生き物である。次はどんな夢を追いかけようか――。そんなことを考えながら、筆者はまた次のフィールドへ向かう。
<稲垣順也/TSURINEWSライター>


