臭みを消すことが肝要となる魚料理。昔から様々な野草が、その目的で用いられてきました。特にサンショウの芽を使った「木の芽焼き」や、鮎の塩焼きに添えられる蓼酢(タデ酢)は、魚の臭みを和らげ、爽やかな風味を引き立てます。今回は、日本の伝統的な魚料理に欠かせない「魚と相性の良い野草」について紹介します。
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なぜ山椒は魚と合うの?
皆さんは「魚の木の芽焼き」という料理について聞いたことはありますでしょうか。木の芽焼き、とはまた曖昧な名前だなと思われたかもしれません。
この木の芽とは「サンショウの芽」を指します。木の芽と呼ばれる山菜はいくつかありますが、そのなかで最も有名なものがこのサンショウ。
木の芽焼きは、サンショウの芽をペースト状にして魚に塗り、焼き上げる料理です。サンショウの香りは魚の臭みを消す力があり、木の芽焼きは様々な魚の料理に用いられます。
なぜ蓼は魚と合うの?
魚に合わせる野草といえば、我が国には他にも有名なものがあります。鮎の塩焼きに添えることで知られる蓼(タデ)です。
タデ科植物の代表種であるヤナギタデは、全草に強い辛みと青い香りを持ち、これを酢の中で潰してエキスを出したものが「蓼酢」として用いられてきました。
タデの青い香りは魚、とくに淡水魚の臭みを消し、佳い風味を引き立てます。またその辛みは脂っぽさを消し、口の中を爽やかにしてくれます。アユと合わせるのが有名ですが、塩焼きであればどんな魚にも合います。
他にもある「魚と合う野草」
サンショウやタデほどではないですが、魚と合う野草は他にもあります。
たとえばタネツケバナ。クレソンを小さくしたような野草で全草にワサビのような風味があり、刺身と合わせると美味です。
他にもハナウドという植物の種はコリアンダーシードのような香りを持ち、洋風の煮込みに入れるとぴったりです。ハナウドが含まれるセリ科植物にはミツバやハマボウフウなど刺身のあてに用いられるものも多く、魚に合わせやすい野草のグループと言えそうです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>