確か2010年の少し前から、突如バーッと降りだす雨を「ゲリラ豪雨」と言うようになった。かつて14日間の豪雨の中で創生されたといわれるこの地球の、そんな起源までも思わせるような、まったくなす術もない雨。ゲリラ豪雨は、もちろん釣行中に襲ってくることもある。釣りに影響はあるのだろうか?
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター井上海生)
釣りとゲリラ豪雨
「ゲリラ豪雨」という呼称は、2008年頃にできたらしい。この年の流行語大賞のトップ10にも選ばれている。実に筆者の印象としても、「あーそれくらいだな」という感じがする。当時学生だった私は電車の中で、突如降りだした雨により、2時間車内に幽閉されるという憂き目を見た。そのとき、胸に抱えていた希少な古本がエライ濡れてしまい、本当に泣き出したくなるほどだった――。
と、すでに15年超の歴史を持つ「ゲリラ豪雨」という呼び名だが、実はこれと似た気象現象は以前から各地であった。たとえば沖縄や九州の南方では、このような激しい通り雨を「スコール」と呼んで、日常の一部として受け入れていた。それが本州まで昇ってきたのが、異常気象「ゲリラ豪雨」と言われ始めた最初のことだ。
2024年の夏、筆者の住まう大阪では、何かしら根源的な恐怖を呼び起こすほど、ゲリラ豪雨が多い。先日は釣り場でも突然の大雨に襲われた。通り雨というかわいいレベルではない。雷も伴う。
しかし、釣りには小雨パターンという言葉もある。ゲリラ豪雨も釣りのフォローになったりするのだろうか?いや――その前に、雷も伴うゲリラ豪雨からは、まず避難を考えなければならない。
まずは逃げる
釣り人は雷鳴に敏感だ。竿は雷に打たれやすい、というか、いかにも打たれやすそうだ。釣り人たちは遠雷の音が聞こえ、雲の中に紫閃が瞬けば、すごすごと竿をたたんで逃げ出すものである。実際、雷がかくも釣り竿を優先的に打ってくるかは、わからない。しかし、ゴルフ中に雷に打たれる人も多いというのだから、アングラーもまた何かしら危険を感じたら即退避すべきである。命の安全が第一だ。
私は深夜のコンビニでバイトをしていた頃、雷が店の駐車場を直撃するのを見たことがある。あんな何にもなさそうな街中の、しかもいくらでも避雷針もある、いわば「平原」にでも落雷するのだから、釣り場の竿など確かに格好の雷の落ちどころとなりそうだ。十分に気を付けよう。
雨後は活性が上がる?
では、そんなゲリラ豪雨が止んで、懲りずに釣りをするならどうだろう?小雨パターンのように、にわか雨は、何か海にきっかけを与えて魚の活性を上げてくれるのだろうか。
正直これは、わからないものがある。小雨パターンは小雨によって海中が微妙に刺激され、プランクトンが増殖して、小魚の活性が高くなってそれを追って中大型魚も動いて…という明確な理屈がある。しかし落雷も伴うゲリラ豪雨では、魚も気配を恐れて海底に落ちてしまいそうだ。暫時ではあれ、海水の上に真水ものってしまうので、酸欠気味になるだろう。どちらかといえば活性が下がりそうな条件……。
気化熱で熱気がやわらぐのが救い
ただ、夏の釣り場の通り雨で何が助かるかといって、釣り人の体力・精神力の微回復である。雨の気化熱で少しだけ涼しくなる。雨の程度によっては魚の活性が上がるかもしれないし、気化熱によって和らいだ空気の中でじっと釣ってみるのもいい。
Wikipediaによると、「ゲリラ豪雨」という言葉の初出は、1969年8月読売新聞に見られるという。このときもやはり8月、夏季のスコールであることは、現在と同じようだ。気象予報は発達したが、皮肉なことに、予想困難だった驟雨は今ではある程度予測はできても、降雨そのものは防げない。人間は常に自然の前に、無力なものだ。ゲリラ豪雨のみならず、急な気象変化には即危険回避の行動をとりたい。
<井上海生/TSURINEWSライター>