霞ヶ浦の湖岸で「アメリカナマズ」が大量に不法投棄される事件が相次いでいます。いったいなぜなのでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:麦藁村長)
霞ヶ浦で外来ナマズが不法投棄
茨城県にある、日本第二の面積を誇る湖・霞ヶ浦。もともとは生態系の豊かな水域ですが、近年は外来種による環境悪化が目立つようになっています。
そんな霞ヶ浦で先日、とある「事件」が発生し、メディアで話題になりました。それは「魚の大量不法投棄」。
事件のあらましは、霞ヶ浦に生息するアメリカナマズという魚の死体が、湖岸の護岸の上に10匹以上放置されたままになっていたというもの。当地でウナギ漁を営む漁師が発見し、SNSに投稿したことで話題になり、いくつかのオンラインメディアにも掲載されました。
湖岸各地でよく見られる
投稿後、ネットでは「犯人探し」が始まりました。
アメリカナマズは外来生物法で特定外来生物に指定されている魚であり、行政や漁師、釣り人によって駆除活動が行われている魚です。同様の魚であるブラックバスと比べると捕獲が容易であること、野生動物の餌にもなっていることから犯人となりうる可能性があるものは非常に広いと考えられました。
しかしその後、同様の「事件」が湖岸各地で断続的に確認されていること、さらに自然湖岸ではなく護岸上で見られることが多いことなどから、自然と「犯人」の可能性は狭まっていきました。
主犯は「外来魚を狙う」釣り人
そして最初の投稿から程なくして「犯人」が判明しました。それは「ヘラブナ釣り師」。最初の投稿をした漁師が、まさに護岸上に投棄を行っている最中のヘラブナ釣り師に抗議をする動画をSNSに投稿したのです。
筆者も個人的に、ヘラブナ釣り師が怪しいのではないかという推測をしていました。アメリカナマズはブラックバスと違い疑似餌ではあまり釣れないため、バス釣り師が大量に捕獲、投棄する可能性は薄いと思われます。また美味しい魚のため狙って釣る餌釣り師もいますが、彼らには投棄する理由がありません。さらに、漁師は自分たちの仕事場である護岸を汚す動機がなく、彼らの可能性もないものと考えると、「餌釣り師でアメリカナマズを大量に釣り上げる可能性があり、かつその魚を求めていない人」であるヘラブナ釣り師に自ずと絞られます。
ヘラブナは琵琶湖原産の魚で、全国の殆どの地域では「国内外来種」となります。にも関わらず、少なからぬヘラブナ釣り師が「外来種であるアメリカナマズやブラックバス、ブルーギルが釣れたら陸に放置して殺すべき」と考えている事実があり、実際に野外のヘラブナ釣り場ではこれらの魚が放棄されていることがとても多いです。
彼らは「良いことをしている」という意識があり、老齢ゆえの頑固さも手伝って他人の忠告を受け入れません。上記の動画でもその様子が随所に見られ、過去にヘラブナ釣り師の蛮行を見てきた人間としてはため息しか出ないものでした。
どういう理由があれ、大量の魚を放置して行くことは不法投棄という犯罪です。霞ヶ浦については外来魚を再リリースすることを禁止するルールもなく、陸上に投棄する必要は全くありません。駆除がしたいなら持ち帰るべきです。もしこの記事をご覧のヘラブナ釣りを嗜む皆さまがいらっしゃれば、そのような行為をしている人を見かけたらぜひ注意するか、通報をするようにしていただけると、同じ釣り人としてとてもありがたいなと思います。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>