日本で最も多くの固有種が生息する宝の湖・琵琶湖。しかし今ここに「ブラックバスよりも凶悪」と言われる外来種が侵入しようとしています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
琵琶湖に忍び寄る危機
数百万年の歴史と、その時が育んできた数多の固有種を誇る日本最大の湖、琵琶湖。日本でここにしかいない魚たちと、彼らが構築する世界でもユニークな生態系が広く知られています。
しかし、そんな琵琶湖の魚と生態系に、いまとても大きな危機が忍び寄っています。それは「アメリカナマズの侵入」です。
アメリカナマズとは英名をチャネルキャットフィッシュといい、アメリカから移入された外来生物のナマズです。琵琶湖下流の瀬田川で近年著しく増殖しており、琵琶湖のある滋賀県では河川での食い止めを目指してきたのですが、ついに一部の個体が琵琶湖に侵入してしまったようなのです。
アメリカナマズはバスより危険
アメリカナマズはもともと、食用のために移入されました。肉食性で成長も早く、味も大変良いということで各地の河川や湖に養殖場が作られたのですが、そこから逸出したり、またそもそも直接環境下に放流してしまったりして野生化し、在来生物を盛んに捕食して増殖しています。
かつて放流された茨城県の霞ヶ浦では、頂点捕食者であるにも関わらず他の魚をも圧倒するほどの生息数となり、いまでは漁業を行ってもこの魚ばっかり網に入ってしまう状況です。
生きてる餌でも死んでいる餌でも、果ては植物性のものまでも口にするその貪欲さから、アメリカナマズの駆除に携わる人は全員口を揃えて「ブラックバスよりも危険」というほど。そんな魚が琵琶湖にひとたび本格侵入してしまえば、琵琶湖の少なからぬ量の固有種が絶滅に追い込まれる可能性があります。
「釣り人の協力」も不可欠
現在、アメリカナマズは滋賀県や瀬田川の漁業関係者によって懸命の駆除が行われています。しかし彼らは全長1mほどになる大型魚であるにも関わらずごく浅いところにも生息でき、網での漁だけではすべてを駆除するのは難しいです。
一方で彼らはその貪欲さから「釣りで捕獲されやすい」という特徴があります。前記の霞ヶ浦では有志による駆除釣り大会が実施されており、初めて釣りをするという人でも簡単に釣り上げています。
そのため、もし本格的にアメリカナマズが琵琶湖に侵入してしまったら、その駆除において釣り人が協力できる部分は小さくないと思われます。琵琶湖では各地に「外来魚回収ボックス」が設置されており、釣れたアメリカナマズをその中にいれるだけで駆除に貢献できますので、釣り人の皆様に置かれてはぜひ検討してもらえると嬉しいなと思います。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>