固有種の宝庫『琵琶湖』と外来魚アメリカナマズの攻防 ダムが最前線?

固有種の宝庫『琵琶湖』と外来魚アメリカナマズの攻防 ダムが最前線?

固有種の宝庫と言われながらも、近年は外来生物によりその多様性が失われてきている日本最大の湖・琵琶湖。そこにいま、史上最悪とも言われる外来種が侵入しようとしており、滋賀県が必死で駆除を行っています。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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琵琶湖のアメリカナマズ問題

琵琶湖の唯一の流出河川で、淀川水系の本流のひとつでもある滋賀県の瀬田川。この川の上流部にある瀬田川洗堰で、いまとある外来魚の繁殖を防ぐための戦いが行われています。

その魚とは「アメリカナマズ」。琵琶湖と瀬田川では2000年代に入って生息が確認され、ブラックバスなど他の外来魚のように湖内で大量繁殖するのではないかと懸念されていました。

滋賀県水産試験場は、琵琶湖へのアメリカナマズ拡散を阻止するために、瀬田川の洗堰上流域での徹底駆除に力を入れてきました。その結果、2020年秋以降は現時点で1匹も捕獲されていないといいます。試験場は「駆除が功を奏し、生息数を抑制できている」とみており、琵琶湖でのアメリカナマズ根絶に近づいた可能性もあるといいます。(『琵琶湖のアメリカナマズ根絶か 瀬田川上流で20年秋から捕獲ゼロ』毎日新聞 2021.6.17)

アメリカナマズとは

アメリカナマズはいわゆる俗称で、正式名称はチャネルキャットフィッシュといいます。北米原産で、食用として1971年に日本に輸入されました。大きいものは1mを超える大型の肉食魚で、生息域では生態系の頂点に立ちます。

固有種の宝庫『琵琶湖』と外来魚アメリカナマズの攻防 ダムが最前線?大きな口を持つアメリカナマズ(提供:茸本朗)

茨城県の霞ケ浦や、京都、大阪両府、奈良県の淀川水系で自然繁殖が確認されています。彼らは生態系を脅かすだけでなく、ワカサギやアユ、エビなど漁業状価値の高いものもどんどん食べてしまうため、大きな漁業被害をもたらします。

加えて背びれ、胸びれに鋭いトゲを持ち、網にかかったアメリカナマズを外そうとして漁師が怪我をしてしまう被害も。これらのことから「特定外来生物」に指定され、駆除が行われ続けています。

それでも楽観はできない

アメリカナマズは大変貪欲な魚で、釣りのメッカとなっている霞ヶ浦では魚やミミズの他、魚肉ソーセージ、パンなどでも容易につれてしまうほど広い食性を持っています。

そのため、ひとたび琵琶湖に侵入を許してしまえば、世界中で琵琶湖にしか生息していない貴重な固有種の多くが絶滅に追い込まれる可能性があります。現在、瀬田川では洗堰上流での駆除はうまく行っている一方、下流では20年度に過去最高の170匹のアメリカナマズが捕獲されているといいます。

固有種の宝庫『琵琶湖』と外来魚アメリカナマズの攻防 ダムが最前線?琵琶湖の魚食文化を守るために(提供:PhotoAC)

彼らは瀬田川下流の天ケ瀬ダムで盛んに繁殖しており、ここから遡上してきた可能性が高いです。普段は彼らが堰を越えることは少ないと思われますが、大雨などで増水が起こると容易に堰を乗り越えて上流まで侵入すると考えられています。そのため、今後は天ケ瀬ダムのある京都府とも連携し、駆除を進めていくそうです。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>