北米原産「アメリカナマズ」はなぜ日本へ? 琵琶湖や霞ヶ浦で増加中

北米原産「アメリカナマズ」はなぜ日本へ? 琵琶湖や霞ヶ浦で増加中

日本には多くの特定外来生物が存在しますが、近年、アメリカナマズという魚が急増しているのをご存知でしょうか?琵琶湖や霞ヶ浦で急増するこの魚は北米原産の外来種。生態系や漁業に悪影響を与える一方で、食用や釣りのターゲットとしても利用されています。今回は、そんなアメリカナマズについてお話しします。

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アメリカナマズとは

日本で増加しているアメリカナマズはIctalurus punctatusで、標準和名は「チャネルキャットフィッシュ」。本種はナマズ目アメリカナマズ科アメリカナマズ属の魚で、チャネルキャットフィッシュは英名のChannel catfishがそのまま標準和名に使われています。

本種は名前の通り北米原産のナマズ目魚類ですが、霞ヶ浦をはじめ愛知県矢作川、滋賀県琵琶湖などでも見られ、生態系に大きな影響を及ぼすことから危険視されている魚です。また、口にある髭を使い底生性の生物を捕食、エビ類やハゼ類などが捕食対象になっていることが分かっています。

日本産の淡水ナマズとは形態が大きく異なることから、在来種との識別は比較的容易です。本種は体が淡色(幼魚では暗色班がある)で大きさは最大1m超、口には4対8本の髭を持つこと、胸鰭に強大な棘を持つことが特徴。

国内の淡水ナマズの中でも大きくなるナマズ科魚類とは髭の他に脂鰭を持つことで区別することができます。

アメリカナマズ定着の経緯

アメリカナマズは1971年に養殖を目的として茨城県などに導入されました。1982年には埼玉県の養殖池から江戸川へ逸出したとされており、2000年頃に霞ケ浦などで爆発的に増加したといいます(14 アメリカナマズの分布、生態、被害の現状-農林水産省)。

その後、アメリカナマズは徐々に分布域を拡大し、現在では、霞ヶ浦、北浦、利根川水系、滋賀県、島根県、愛知県、福島県などから記録があるようです。

特定外来生物に指定

2005年には「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」により、「外来生物(海外起源の外来種)であって、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、又は及ぼすおそれがあるもの」として特定外来生物に指定。飼育、繁殖、保管、運搬することが禁止されました(外来生物法-農林水産省)。

北米原産「アメリカナマズ」はなぜ日本へ? 琵琶湖や霞ヶ浦で増加中外来魚回収ボックス(提供:PhotoAC)

加えてチャネルキャットは緊急対策外来種(対策の緊急性が高く、積極的に防除を行う必要がある)にも指定されています。

2024年5月現在、魚類では26種の特定外来生物が指定されており、アメリカナマズ科の魚は本種を含め3種が指定。そのうち定着が確認されているのは本種のみだそうです(特定外来生物等一覧-環境省)。

チャネルキャットフィッシュは各地で駆除が行われており、地域によってはリリースが禁止されていることもあるため、捕獲した際には外来魚回収ボックスなどに入れましょう。

アメリカナマズの利用

急増するアメリカナマズですが、在来種に悪影響を及ぼすだけではなく漁業にも深刻な影響を与えるのです。

先述の通り本種は胸鰭に棘を持つ為、網にかかってしまうと外す際に漁師さんが怪我をする恐れがあります。加えアメリカナマズは今のとこと商品価値が低い魚なので、たくさん獲れても大きな収入になりません。

これを受け各地でアメリカナマズを有効活用しようと様々な取り組みが行われています。中でも本種は味が良いことから食用としての活路を見出す活動が見られ、茨城県の「あたりや食堂」ではキャットフィッシュを使った料理「霞天丼」を食べることができます。

また、アメリカナマズは強いファイトを楽しむことができる為、釣りのターゲットとしても人気があり、釣り人による駆除活動も行われているようです。

このようにアメリカナマズことチャネルキャットフィッシュは日本国内で急増しています。捕獲した際には都道府県の条例に従い適切な処置をしましょう。また、放流は絶対に行ってはいけません。

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(サカナト編集部)