船もイカダも堤防も、春の大型アオリイカが盛期を迎えている。特に三重県南部では秋イカの終わりがなく、だらだらと釣れ続けてそのまま春イカシーズンに入った感じだ。今やすっかりアオリイカのメッカとなった南伊勢町迫間浦。4月17日に2人の名手に同行し、イカダからの春の大型アオリイカ攻略を取材した。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版 編集部)
ヤエンにも待望のアタリ
このヒットから30分ほどしたころ、今度はヤエン仕掛けの磯ザオにセットしたリールのドラグがけたたましく鳴り響いた。そう、ヤエン釣法ではドラグは極限まで緩めておくのが基本。イカがアジを抱いて泳ぎだしたとき、違和感を一切与えないためだ。
だがここで戸松さんが「まずいな……」とぽつり。ミチイトの方向がイカダを固定しているロープの方向に向かっているのだ。ここでようやくイトの出が止まり、手でスプールを押さえながら寄せに入る戸松さん。ある程度寄せたところでいよいよヤエン投入にかかる。
ロープをいかにかわすかがキモ
戸松さんはヤエンがスムーズに落ちていくように、磯ザオを上下に操作する。そしてアワセを入れた瞬間……、グンッと止められて動かなくなってしまった。恐れていたことが起こってしまった。完全にロープに巻かれてしまったようだ。この時点で生命反応が消えており、イカはすでに逃走した模様。
山根さんいわく、「ジェット噴射の間隔からすれば間違いなくキロオーバー」とのこと。走るストロークを見れば、だいたいの大きさが想像できるという。
泣く泣くミチイトを切って、仕掛けを組み直す戸松さん。「イカダのヤエンの宿命ですね」と言う。そう、イカダでは必ずアンカーとイカダをつなぐロープが入っている。このロープをいかにかわすかが、最大のキモとなりそうだ。
昼から状況が一変
この直後、山根さんに待望のヒット。ボトムでじっくり漂わせていたエギをひったくったのは、目つきがいかついコウイカ。本命ではないが、待望のヒットに山根さんの顔もほころぶ。
続けて沖向きで乗せたのは、なんとアカイカ(ケンサキイカ)。イカメタルのターゲットだが、湾内にも入ってくるとは……。
サビキでアジを釣ってエサ補充
昼休憩を挟んでアジのスカリをのぞくと、残りのアジは3匹。これは最後まで持たないかもしれないと、戸松さんはヤエンとウキ釣りのサオを見ながら、サビキ釣りを始めた。
使用するエサはマルキユーのアミ姫とアミ姫キララ。最初はアタリが遠かったが、すぐにアミ姫にアジが集まってきたようで、勢いよくサオ先が揺すられる。上がってきたのは20cmないぐらいのアジ。ヤエンに使うにはちょうどいいサイズだ。
アジだけではなく、カタボシイワシや小サバ、カタクチイワシなんかも交じり、しばし癒やしの釣りを楽しむ戸松さん。ここで再びリールのドラグが鳴り響く。
待望のキロアップが浮上
今度こそ……とじっくりイカの動きを見極める戸松さん。イカの走りが止まったところで、ゆっくりロープとは逆の方向に誘導する。
完全にロープから離れたところで、いよいよヤエン投入。サオの上下でヤエンを滑らせ、ここぞというところでアワセ一閃。2号の磯ザオが大きく曲がった。
グーングーンというジェット噴射をサオさばきでかわし、浮いたところで山根さんがネットですくい込む。待ちに待った1匹は、ギリで1kgありそうなオスのアオリイカだった。
エギングで執念の1匹
ここまでコウイカとアカイカの山根さん、午後2時を回るとさすがに焦りを隠せなくなってきた。ここでお茶を飲み、少し休憩。深呼吸をして再びロッドを手に取る。
ボトムだけでなく中層も意識し、じっくり見せながら誘ってくる。そして……エギが足元まできたところで、「よっしゃ~」と還暦の雄叫びが響く。
ジリジリ滑るドラグを押さえ、浮かせて取り込んだのはこちらもギリ1kgあるかな~ぐらいのメスのアオリイカだった。これまでこわばっていた山根さんの表情が、この日初めて緩んだ瞬間だった。