河川に住むカニ『サワガニ』はとても美味 寄生虫対策には加熱調理が必須

河川に住むカニ『サワガニ』はとても美味 寄生虫対策には加熱調理が必須

春というのは多くの生き物が動きだす季節ですが、サワガニもそんな生き物の一つです。いったいどんな生態をしているのでしょうか。調べてみました。

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サカナ研究所 その他

サワガニって?

カニと聞くと海(海水)に生息する生き物だと思う人も多いと思いますが、実は淡水にもカニは生息しています。

そのカニの名前が「サワガニ」。

沢に住むカニだから「サワガニ」と言う名前ですが、地方によっては「シミズガニ」「タンガネ」などとも呼ばれているようです。

サワガニはエビ目・カニ下目・サワガニ科に分類されており、日本の固有種として本州から四国、九州の屋久島までの淡水域に生息しています。

生息域においては水がきれいな渓流や小川の上流から中流域に多く、春から秋にかけて活発に活動し、冬になると川のそばの岩陰などで冬眠をします。

寿命は思っているよりも長く、 数年~10年程生きるものもいるようです。

大きさは甲羅の幅は20mmを超し、足を含めると50~70mmほどで、丸みのある滑らかな黒褐色の甲に朱色の足をしています。

中には、紫や青みがかった体色のものもいますが、ほとんどは赤いものです。

サワガニの好む場所

サワガニは水がきれいな河川の上流から中流域に多く生息しています。

その中でもサワガニが好むのは川底が石や砂礫で隠れられるような岩がある場所です。水の流れがあまり強くない場所に好んで身を隠しています。

他にも支流の分岐や落ち葉が引っかかるような場所、藻の下や枝が堆積しているような場所も好みます。

サワガニは冬眠をする

先にも記載したようにサワガニは冬に冬眠します。水生生物に冬眠のイメージはあまりありませんが、サワガニは冬眠をします。

気温がぐっと下がってくる11月頃になると自然界でも食料は減ってきます。その頃になるとサワガニも変温動物ですので活性も徐々に下がり始め、12月になるころには土や枯葉の中に身を隠し冬眠を始めます。

そして暖かくなる春ごろにまた活動を再開します。

サワガニって美味しいの?

サワガニは非常に美味しいカニとしても知られています。

有名なのはサワガニを油で揚げただけの素揚げですが、サクッとした食感と香ばしいカニの風味が特徴で、通な居酒屋では最高のおつまみとして提供もされているようです。

一方で、サワガニが活動するの主に春から秋ですが、実は冬眠中のサワガニが美味しいとも言われています。

冬眠のためにたくさんの栄養を身に蓄えているため、活発な時期に比べて風味も豊かだと言われています。

しかし、冬眠していることもあってなかなか見付けにくいことから流通量は大幅に減ってしまいます。

河川に住むカニ『サワガニ』はとても美味 寄生虫対策には加熱調理が必須サワガニの素揚げ(提供:PhotoAC)

最近は養殖もされている

サワガニはとても美味しいことから最近では一部の地域で積極的に養殖もされています。

有名なのは四国や九州地方などの山間部で、小さなものは佃煮などとして販売されているようです。

また、飼育のしやすさ、寿命の長さなどから観賞用としても注目されており、テラリウムやコケリウムの水槽に導入されることもあります。

そういった意味でも食用、観賞用の両方の面で養殖が進んでいるようです。

寄生虫には気を付けて

非常に美味しいカニではありますが、サワガニはジストマという寄生虫の宿主となっていることが多いです。

ジストマというのは肝吸虫の一種で、寄生されると肝吸虫症になります。これは肝臓の胆管に寄生される病気で、全国各地で報告されています。

肝吸虫の幼虫は、サワガニに限らず淡水にすむサカナの鱗や筋肉に寄生していて、幼虫をもつ生物を生で食べることで感染します。

最悪の症状としては、寄生虫の幼虫が一緒に口の中に入ってきて、小腸を突き破り、腹腔(ふくくう)→胸腔→肺と移動していくことに伴う激痛。そして、胸膜炎や気胸を起こします。

治療薬はあるものの、たいていは重症化し入院を余儀なくされます。

自分の手で調理する場合は必ず70度以上の高温でしっかり火を通してから食べましょう。4~5分以上の加熱を必要とします。

自分で食べる際は細心の注意でいただいて下さい。

<近藤 俊/サカナ研究所>