先日、北海道の浜に非常に大量の「ホッキ貝」が打ち上がりニュースになりました、一体なぜこのようなことが起こったのでしょうか。
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北海道の浜で大量のホッキ貝が打ちあがる
先日、北海道太平洋側の海岸に、大量の「ホッキ貝」が打ち上がり、全国的なニュースとなりました。
ホッキ貝は標準和名をウバガイといい、握りこぶしほどの大きさの食用貝で、寿司ネタや炊き込みご飯の材料として高い需要がある貝です。北海道では各地で主要漁獲物となっています。
そんなホッキ貝が浜辺を埋め尽くすほど打ち上がった景色は壮観で、ニュースを見てびっくりした人は多かったのではないでしょうか。ニュースを聞きつけた地元の人々が押し寄せ、浜辺は祭り会場のようになったそうです。
いったいなぜ打ち上がったの?
この春の珍事に対し「地震の予兆では?」といって不安がる声も少なからずあるようですが、今回のような現象については実のところ「しばしばあること」であるようです。
ホッキ貝のような外洋性の貝は、しばしば大量発生することがあります。そしてその原因は天変地異よりも「統計的なもの」であることが多いです。
例えば、メス1個体が1万個の卵を放出する貝がいたとしましょう。個体数が維持されるためには、その卵は0.02%しか生存できない計算になります。しかしある年だけ、何らかの理由で0.03%生き残ることができたとします。その場合、確率的にはわずかな差ですが、現実としては例年に比べ1.5倍以上の個体が発生することになります。生物の大量発生は概ねこのような理由であることが多いです。
今回もおそらく、何らかの理由で偶然多くの個体が生き残り、資源量が一時的に増大したと考えるのが自然でしょう。そこに春の時化が重なり、強い波で大量に打ち上げられた、というのが真相ではないかと思われます。
打ち上がった貝を拾って食べるのはリスク大
さて、今回のように貝が大量に打ち上がると、多くの人がそれを拾いに来ることもあります。もちろん食べるために持って帰ると思われますが、果たして食べても大丈夫なのでしょうか。
実際のところ、これはあまり推奨できる行為とは言えません。というのも二枚貝は陸に打ち上げられるとすぐに死に、あっという間に腐敗してしまうからです。仮にまだ生きていたとしても、死にかけた貝の体表では大腸菌などが繁殖し異臭を放っていることもしばしばです。
仮に食べようとする場合、生や半生状態で食べるのは食中毒のリスクが高いと言わざるを得ません。しっかりと火を通し、少しでも匂いなどに違和感があれば諦めて廃棄するのがよいでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>