魚の中には「星」と呼ばれる美味しい部位があり、魚種によってはその「星」だけで流通することもあります。
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魚の「星」食べたことある?
魚を捌いていると、肝臓と並びはっきりとなんの部位かわかるものがあります。それは心臓。
魚の心臓は心房と心室が1つずつしかなく(哺乳類は2心房2心室)血液を1方向に流すことしかできません。そのため他の生物と比べ、体のサイズに対する心臓の割合は非常に小さいものとなっていますが、それでも赤(心室)と白(心房)のツートンカラーが非常に目立つためすぐに見つけることができます。
なぜ心臓を星と呼ぶかについて、調べてみましたが理由はわかりませんでした。個人的には、腹腔内でとても目立ち、まるで輝いているように見えるためにそう呼ばれるようになったのではないかと思っているのですが、いかがでしょうか。
いまや高級品「もうかの星」
さてそんな「魚の星」のなかで、最もよく知られているものはおそらく「もうかの星」でしょう。
もうかとは「真鱶」、つまり最も一般的なサメという意味になるのですが、これは東北地方でしばしば食用にされるネズミザメを指しています。つまりもうかの星とはネズミザメの心臓のことなのです。
サメの臓器は哺乳類と似ているとよく言われますが、心臓もパッと見は人間のそれに見えなくもありません。基本的には生で売られており、スライスして「レバ刺し」のように食べられることが多いです。
かつては比較的安価なおつまみといった体でしたが、最近はネズミザメの水揚げが減り、星もひとつ2000円以上することもザラです。
カツオの心臓は「ちんこ」?
このネズミザメ以外にも「星」が流通する魚がいます。それはマグロ。
巨大魚であるマグロの心臓は他の魚のそれよりも大きく、やはり刺身にすることができます。もうかの星と比べると多少血の匂いが強く、青魚が苦手な人にとっては食べづらい食材ですが、好きな人にはたまらない味わいです。
さて、このマグロと比べるとはるかに小さいものの、そっくりな形状をしており、やはり市販される心臓があります。それはカツオの心臓。しかしカツオの心臓は「星」と呼ばれることはあまりないようです。
ではどのような名前で呼ばれるのかというと「ちんこ」。もともとは「チチコ」という名前で呼ばれていたそうですが、なまってこうなったと言われています。チチコの由来はやはりはっきりとはしませんが、ちんこのほうはその形状を見ているとなんとなく連想できなくもない気がします。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>