先日「魚の味がする『藻』」が商品化されたというニュースがありました。これは一体どのような話なのでしょうか?
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
魚の味がする「藻」
我々にとって身近なようで、意外とよく知らない存在である「藻」。
海藻のように食材として取り扱われるものもあれば、クロレラのように健康食品として著名なもの、あるいはボルボックスやアオミドロのように理科の観察に用いられる植物プランクトン類なども「藻」の一種です。
今回、そんな「藻」に関する、非常に興味深いプレスリリースに注目が集まっています。というのも、そのプレスリリースが「『魚の味がする藻』の商業化に成功した」という内容だったからです。
なぜ魚の味がする?
この驚きのニュースを発表したのは、藻類を原料とした食材や健康食品、化粧品などを開発している株式会社ユーグレナ。
魚の味がする藻はその名を「オーランチオキトリウム」といい、以前より有望な藻類として培養技術の研究を進めていたところ、生産体制の構築に成功し、商業化の目処が立ったのだそうです。
このオーランチオキトリウムがなぜ魚の味がするのかというと、魚に含まれる脂肪の一種であるDHAを豊富に含むから。そもそも魚たちの脂肪に含まれるDHAは、このオーランチオキトリウムをはじめとした藻類が作り出したものであり、食物連鎖によって魚たちに取り込まれ蓄積されたものなのです。
いったいなんの役に立つの?
しかし、このオーランチオキトリウムは一体どのような場面で役に立つのでしょうか。
まず考えられるのは「サプリメント原料」としての需要です。DHAは人体に必須の不飽和脂肪酸でありながら、体内で生成することができないために食事から摂取する必要があります。
しかし昨今の魚食離れにより、足りない分をサプリメントで補おうという需要が大きくなっています。これまでDHAサプリメントは魚の脂から生成されていましたが、オーランチオキトリウムを培養しそれから採取したほうがより安価に作ることができます。
また、サプリメントではなく、魚そのものの代用食材としても有望視されています。プランクトンであるオーランチオキトリウムの培養は、同じカロリー量の魚を養殖するよりも必要なエネルギー量が少ないため、環境に優しい原料であると言えます。
そのほか、豊富な脂肪含有量を生かした「バイオ燃料」としての活用も想定されるなど、様々な場面での活用が期待されています。近い将来、我々の生活にとって欠かせない存在となっている可能性も大いにあるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>