「右カレイ・左ヒラメ」と覚えるのは危険 カレイ目の魚の眼の向きはややこしい

「右カレイ・左ヒラメ」と覚えるのは危険 カレイ目の魚の眼の向きはややこしい

カレイとヒラメの見分け方でよく「右カレイ、左ヒラメ」というのを耳にするのではないでしょうか。確かに"カレイ"と付く魚は右向き、"ヒラメ"と付く魚は左向きの種が多いです。しかし、この覚え方には落とし穴があります。ここではカレイ目の魚の眼の<向き>について解説します。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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サカナト編集部

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ややこしい標準和名

魚は標準和名に惑わされてはいけません。これはカレイ目も例外ではなく、ややこしい標準和名の種がたくさんいます。

テンジクガレイ、ナンヨウガレイ、アラメガレイ……。名前だけを見るとカレイ科のように思えます。しかし、ここで挙げた3種はヒラメ科の魚です。

テンジクガレイとナンヨウガレイはガンゾウビラメ属の魚で眼は「左向き」です。この2種は口が大きいという特徴から、ヒラメ科というのは分かるかもしれません。

アラメガレイはヒラメ科の中では口が小さいこと、成魚でも体長数センチ程にしかならない種です。細部の観察が難しいことから、ヒラメ科の特徴を捉えることは難しいかもしれません。

眼の位置が逆になってしまう側面逆位

ヌマガレイを除くカレイ科は「右向き」で、ヒラメ科とウシノシタ科は「左向き」。ここまで覚えたら完璧と思いきや、カレイ目には側面逆位(そくめんぎゃくい)というものがあります。

簡単に説明すると、眼が正常な個体とは逆になってしまう現象です。ヒラメ科のヒラメでは通常眼が「左向き」ですが、側面逆位個体では逆の「右向き」になってしまいます。

ただし、側面逆位個体との遭遇率はあまり高くはないので、頭の片隅に置いておけば良いと思います。

その他のカレイ目の魚たち

ここまで紹介してきたカレイ目の魚はごく一部であり、他にも多くのカレイ目魚類がいます。主なグループの眼の向きと簡単な解説していきます。

「右カレイ・左ヒラメ」と覚えるのは危険 カレイ目の魚の眼の向きはややこしいダルマガレイ科の魚(提供:PhotoAC)

・ダルマガレイ科:左向き。標準和名は「○○ダルマガレイ」という種が多いですがセイテンビラメのような例外があります。深海種や南方種が多く属する変わったグループです。

・ササウシノシタ科:右向き。ウシノシタ科によく似ますがウシノシタ科より体高の高い種が多いです。背鰭・臀鰭は尾鰭と連続しない種と連続する種がいます。食用で知られるシマウシノシタはこのグループに属します。

・コケビラメ科:右向き・左向き。国内にはコケビラメとウロコガレイの2種が属します。標準和名の通りコケビラメは左向きでウロコガレイは右向きです。2種とも底引き網でよく見られます。

・ベロガレイ科:右向き。滅多にお目にかかれないカレイ目魚類です。まず出会うことはないでしょう。

・カワラガレイ科:右向き。底引き網でしばしば見られる魚です。国内に生息するのはカワラガレイ1種のみで底引き網でしばしば見られます。

・ボウズガレイ科:右向き・左向き。カレイ目の中では原始的なグループとされています。眼の向きが決まっておらず左右どちらも同じ頻度で現れます。日本では記録されていませんが東南アジアなどでは市場でごく普通に見られます。大型種であり重要な食用魚です。

このようにカレイ目魚類にはカレイとヒラメ以外にも多くの種が属します。そのため「右カレイ、左ヒラメ」はあくまでもヒラメ科とカレイ科の識別方法にすぎないのです。

(サカナト編集部・鈴川)