日本三大珍味のひとつ・からすみ。魚卵で作るということは知られていますが、何の卵を使っているかは知らない人が多いようです。
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からすみの仕込みがシーズンイン
10月半ばを過ぎ、各地に本格的な秋が訪れる頃になると、各地で「からすみ」の仕込みがスタートしたというニュースが流れます。
からすみはうに(塩うに)、このわた(ナマコ内臓の塩漬け)と並び日本三大珍味のひとつにカウントされる伝統食材です。その原料はボラの卵巣で、塩蔵と日干しを繰り返し味を濃縮させています。
三大珍味の中でも最も高価なものであり、質の良いものであれば一腹分で1万円を超えます。ボラそのものは決して高価なものではないのですが、卵巣が入っている時期のみ大変な高級魚として扱われます。
そもそも「からすみ」ってどういう意味?
しかし、ボラの卵巣がなぜ「からすみ」と呼ばれるのでしょうか。
からすみとは漢字で書くと「唐墨」、つまり「中国の墨」ということになります。皆さんも学校の初動の時間に、硯で墨をすって墨汁を作ったことがあると思いますが、中国から伝来した墨と、干したボラの卵巣の形状が似ていたことが名前の由来となったそうです。
ボラ以外の「からすみの原料魚」
さて、今しがた「からすみはボラの卵」と書きましたが、実は最近ではそうでもなくなっているようです。というのも近年卵を持つサイズのボラの漁獲量は減っているようで、代用としてそのほかの魚が使われているのです。
例えばサワラ。春先に産卵のために内湾に入り込んでくるサワラは卵巣を持つ個体の漁獲量も多く、その卵巣は大きくて癖の無い味をしているため、塩蔵して唐墨にされます。
また昔からのからすみ産地である三重県南伊勢町では、養殖されるマグロの卵巣を用いたからすみ作りが行われています。ボラのからすみよりも大きいですが、脂肪分が少なくさっぱりとしていて旨味を感じやすいです。
なお、日本のお隣台湾では、アブラソコムツという深海魚の卵巣を使って作るからすみ「油魚子(ヨウユーズ)」が作られ、名産となっています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>