ウナギのようでウナギではない不思議な魚「タウナギ」。ちょっと困った外来種で、美味しく食べられる食材でもあります。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
ウナギではないウナギ
例年にも増して早く真夏モードに突入した日本列島。体に障る猛暑が続き、ついついウナギが食べたくなる時期です。
暑くなると土用丑の日に向けたウナギの宣伝が目に付くようになりますが、わが国にはこのウナギとは異なる「特殊なウナギ」がいくつかいることをご存知でしょうか。
例えば「オオウナギ」。南方系のウナギの一種で、大きいと2mを超えることもある巨大な魚です。沖縄など南の地域に行くと少なからず生息している魚ですが、食用にされることはあまりないようです。
その他にもヤツメウナギやヌタウナギなど、原始的な魚類の一種でウナギと呼ばれるものもありますが、今回テーマに挙げるのは、これらとはまた別の「ウナギではないウナギ」。その名も「タウナギ」です。
金色の「タウナギ」
タウナギはウナギそっくりの見た目をしていますが、タウナギ目というグループに属しており、まったく近縁ではありません。
タウナギはその名の通り田やそれに通じる用水路に生息している魚で、黄色みの強い黄土色の体色をしており、浅い用水路にいる個体は非常に目立ちます。夜間にライトで照らすと金色に浮かび上がり、見つけるとぎょっとします。
日本では関東地方より西に分布していますが、特に関西地方で生息数が多くなっています。日本にいるもののうち、南西諸島に生息するものは在来種ですが、九州以北に生息するものは中国から移入された外来種であると考えられています。
ウナギじゃないけど食べて美味しい
タウナギは魚でありながら空気呼吸ができるという特徴をもち、水の少ない時期は泥に潜っています。そのため田んぼの畔に穴をあけてしまい、農業被害をもたらすことから嫌われています。しかしその習性を逆手に取り、東南アジアでは水田から水を抜く時期に土を掘り返し、タウナギを漁獲するという文化があります。
これらの東南アジア諸国や台湾、中国などの地域では、タウナギは食用としてポピュラーな魚です。しかし一般的なウナギと比べると泥臭さが強く、脂もないためにかば焼きや白焼きのような一般的なウナギ料理の手法では美味しくなりません。油を用いて濃い味付けの炒めものや、酸味を効かせたスープにすると美味しく、普通のウナギとは全く違う味わいが楽しめます。
タウナギは初心者でも見つけやすく捕獲も容易なうえ、外来種として移入された地域でタウナギを捕獲することは水田を守ることにもつながるので、見つけたらぜひ食べてみてほしいと思います。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>