どんな時期でも場所でもすべてのアングラーが同じ対象魚を狙うわけではないので、釣り場には必ず別の魚を追う釣り人がいると考えた方がいい。たとえば汽水域でも、リバーアジングのアングラーや、シーバスのアングラーがいる。それぞれ大きさから何から違う釣り物だ。とくに春の海で釣りやすいこの2魚種の釣り人は共存できるのか、私見を述べたい。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター井上海生)
異なる釣り物のアングラー
春の湾奥ならばシーバスとアジ、チヌとメバルなど。着き場が似ているために、他の釣り物を狙うアングラーが接触しそうになるタイミングがある。秋のタチウオとアオリイカなんかもそうだ。
力関係に差がある魚の釣り人は、やはり共存しにくい。しかし、だからといってどちらかが場を譲ったり、言い合いしたりする必要はない。筆者は基本的にライトゲームのアングラーだが、春のバチ抜けパターンのシーバスアングラーに気圧されることもないし、うまく場を分けられていると思う。その心得は、魚同士の力関係や食物連鎖の関係を知ることだ。
外敵の活性で棲み分けされる
筆者は春時期には主にはメバルとアジを狙う。この時期に活性が上がってくる沿岸の大型魚といえばなんといってもシーバスだ。メバルを食うかは知らないが、間違いなくアジは捕食のターゲットとされる。そのため、シーバスの捕食のスイッチが入っていれば、アジはビビる。釣りにくくなる。だが、実は、シーバスが捕食モードになっていなければ、アジはほんの数メートル先にシーバスが群れをなしているような状態でも、臆すことなく混泳する。
こういう魚同士の力関係や、食物連鎖の関係を知っておくと、小型魚が大型魚と場を共にする時期でも、あまり関係なく釣ることができる。大型魚の活性が高ければ、アジはどうしてもその周辺では釣れにくくなるので、少し離れたところで釣った方がいい。つまり、シーバスアングラーがよく釣っている日は、同じ場所でアジを狙うことは難しいのだ。逆にいえば最初から同じようなポイントに投げる必要はなく、別の場所をチェックしてみるといい。
「ベイトが同じ」が厄介
アジとシーバスもその他の魚でも同様に、魚同士に圧倒的な力関係や食物連鎖の関係がなければ、それぞれを狙う上で大きな問題はない。しかし、ひとつだけ厄介なことがある。それは「ベイトが同じ」という状況。春ならば、なんといってもバチ(多毛類)だ。バチはいろんな魚が好き好きに食うので、バチ抜けを意識した攻め方をしていると、狙いの釣り物とは別の魚がくる。陸っぱりの釣りでもっとも非力といえるアジングタックルで掛けてしまうと困るゲストもいる。チヌやシーバスならまだなんとかなるが、面倒なのはボラだ。
こればかりはどうしようもない……が、多少工夫すれば大型魚の襲来もある程度まで低減できる。バチパターンでなく、プランクトンパターンの群れを探せばいいのだ。ジグ単のリトリーブやプラッギングでなく、軽量リグのふわ釣りに食ってくる魚がいれば、そこはプランクトンパターンになっているポイントと読むこともできる。重点的にその場を釣ろう。
大型魚アングラーの動き
大型魚のアングラーと同じ場所に立ったときは、その人たちの動きも参考にしたい。シーバスやチヌのアングラーが釣れていないならば、少なくともそのタイミングではアジがベイトとなっておらず、釣れる可能性が高い。
大型魚が釣れているならば、そのような外敵の活性が高いときには壁際やボトム付近につくので、アジはコースとレンジをタイトに釣ればいい。あるいは、時期を問わず、基本的に大型魚アングラーとはちょっと離れて釣ればいい。そこにアジも着いているはずだ。
<井上海生/TSURINEWSライター>